『東京プリズン』 赤坂真理
河出文庫 2019.3.27読了
ほとんどが最終章のためのお膳立てのようだ。いくつかの時代と虚構が行ったり来たりして、迷子になりながら読み進めていく。文章はすっきりとしておりむしろ読みやすいのだが、何故かあまり入ってこなかった。池澤夏樹さんの解説を読んで、ようやく理解できた感じ。「天皇の戦争責任」を主題とした高校生のディベートが山場であり、戦後の日本の立ち位置など色々と考えさせられるのだが、小説という感じがあまりしない。
「窓の外。鳥のさえずり。朝だ。」例えばこんな感じの、センテンスが単語だけの文章は、私はあまり好みでないようだ。日本語ではなく英語だったらもしかしたら違うのかもしれないが、もっと文章をひねって欲しいと思ってしまう。あくまでも一読者のわがままで個人的な意見である。毎日出版文化賞、司馬遼太郎賞、紫式部文学賞と多く受賞しているのだから、広く一般的には優れた評価をされているのに。こういう時、自分の感性はどこかおかしいのかなとほんの少しだけ不安になる。
この作品は数年前から書店に平積みされてるのをよく目にし、雑誌や新聞でもたまに掲載されていたように思う。今回手にしたのは、朝日新聞(2019.3.7)に掲載されていた「識者120人が選んだ平成の30冊」にラインナップされていたからだ。
こういった新聞書評に載ったものは、たいてい大型書店では特集が組まれる。三省堂神保町本店もまさしくそのひとつ。そして書店の思惑通り立ち止まり、この機会に、と読んでみた次第である。小説以外は数冊しか読んでいないから、これを機に他も読んでみよう。ベストセラーだからといって自分に合うか、面白いかはわからないけれど、まだ読んでいない人の本を読むのは楽しみである。他の作品も読みたいかどうかは、ランチで新しいお店を発掘し、気に入って通うのと同じくらいの確率であろう。要するに、低い確率なのである。