書に耽る猿たち

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『堆塵館』エドワード・ケアリー/ケアリーの世界へようこそ

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『堆塵館(たいじんかん) アイアマンガー三部作1』エドワード・ケアリー   古屋美登里/訳

東京創元社  2020.1.13読了

 

かに書店に並んでいた時からこの表紙は印象深かった。でも、幻想文学かな、子供向けなのかな、となかなか読むまでに至らなかったのだ。しかし、つい先日ケアリー氏の『おちび』という新刊が出たから調べてみると、このアイアマンガー三部作がとても評判が良かったので、まずはこちらからと思い読んでみた。

の小説、確かに面白い!ごみ屋敷?ごみで作られた館?そこで暮らす一族の変な名前と設定が奇想天外なのだけれど、一度ハマったら最後、抜け出せなくなる類の本だ。不思議なおとぎ話。アイアマンガー一族は、廃材とごみで出来た巨大な館「堆塵館」に暮らす。彼らと働く使用人もそこから出ることはできない。

イアマンガーは必ず「誕生の品」を受け取り、それを肌身離さず身につけなくてはいけない。主人公クロッドに与えられたものは、浴室の栓だ。栓の名前は「ジェームズ・ヘンリー・ヘイワード」。え、ヘンリー・ジェームズ?イギリスの大作家の名前がここに。何故栓に名前があるのかと言うと、クロッドには物が名前を告げる、物が発する声を聴くことができるという特殊な能力があるのだ。

して、もう1人の主人公は孤児院にいたそばかすのルーシー。彼女が堆塵館で召使いになったことから堆塵館には変化が生まれていく。堆塵館の秘密が明かされていく。第1部が幕を閉じたわけだが、、続きが気になるような終わり方でなんとも消化不良だ。これは3冊揃えてから読むべきものだったのだ。

ノクロの挿絵がたくさんある。これがまたグロテスクで怖い感じ、しかし味があり、奇妙だが美しく一度見たら忘れられない。この小説を楽しませる要因の一つにもなっている。この絵を見て、なおさら想像を掻き立てられるのだ。なんと全てケアリー氏が描いているとのこと。彼によると描いた絵が先にあり、そこから物語が生まれることもあるらしい。

はり、物語作家の醍醐味は、あり得ない世界を想像でゼロから作り出すことなんだなと心から思った。『ハリー・ポッター』シリーズ、『指輪物語』、まだ未読だが小野不由美さんの『十二国記』シリーズもそうだ。子供も楽しめるファンタジーの部類に入ると思う。想像でしか作れない世界を作り、そして読者に夢中にさせるなんて、きっと書いていてこんなに楽しいことはないだろうな。このアイアマンガーシリーズは、おそらく中学生くらいを対象にしているからか、かなり読みやすくてすらすら読める。もちろん大人も楽しめる。