書に耽る猿たち

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『獣の戯れ』三島由紀夫/フィルター越しに見る三角関係

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『獣の戯れ』三島由紀夫

新潮文庫 2020.10.13読了

 

時は新潮社の雑誌に連載されたようだが、三島さんの書き下ろし小説として5作目の中編小説である。タイトルから想像するに、色香漂う官能的な作品かと思っていたがそういうわけでもなかった。しかし言葉と文体から立ち昇るものには艶めかしいものがある。

ィルター越しに彼らを覗いているような、そんな作品だ。学生の幸二、人妻の優子、その夫逸平の不思議な三角関係。登場人物の誰にも共感出来ず、とはいえ憎いわけでもなく、ただただ遠目に眺めているような感じだ。だから、何が起きようと驚かない。三島作品にはあまりない不思議な読後感だ。

がいつもの三島さんの小説と違うのかと考えたときに、作中の人物誰もが確固たる信念のようなものがなく宙を彷徨う亡霊のようなのだ。ただ、たゆたうようにふわりと生きている。感情もあまりないかのように。しかし独自の「死生観」だけは持っている。

んだかんだ三島さんの本は今年5冊目。どうも、1〜2か月空くと三島さんの文章に飢えて求めてしまうんだよなぁ。これが毒されているということなのだろうか。今年は没後50年で書店でもフェアになっているし、きっと映画も観たから三島さんの顔がどうにも迫ってくるのだ。

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