書に耽る猿たち

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『火曜クラブ』アガサ・クリスティー|人間なんてみんな似たりよったり

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『火曜クラブ』アガサ・クリスティー 中村妙子/訳

ハヤカワ文庫 2022.1.29読了

 

年1冊めのクリスティー作品は短編集を選んだ。ミス・マープルものの短編であるが、去年読んだリチャード・オスマン著『木曜殺人クラブ』の設定にそっくりなこと。というか、この『火曜クラブ』のオマージュとして書かれたんだたら当たり前か。こっちが本家本元の探偵クラブ!

一話はクラブ発足のいきさつから。マープルの甥で作家レイモンドの思いつきで、集ったメンバーそれぞれが迷宮事件を披露して推理し合うことになる。『木曜探偵クラブ』は長編小説だが、こちらは短編。

件ごと(クラブの会ごと)に章にわかれ連作短編の形式となる。最初の事件で登場する人物、どこかで見たことある名前だと思っていたら、20年後に長編として書かれる『ポケットにライ麦を』のとある人物と同じ名前の人だ。なんだか感慨深いものがある。

ンバーたちが安楽椅子探偵さながらに推理を披露し合う。作家、画家、牧師、元警視総督、女優、弁護士など多岐にわたる顔ぶれだ。最終的にマープルはいとも簡単に解いてしまう。セント・メアリ・ミードという村からほとんど出たことがないマープルだけど、長年人々の生活を観察していると「人間なんてほとんど似たりよったり」だと気付いている。

れぞれの事件は「語り」になっているので、現実に(nowで)起こっているわけではない。それなのに緊迫感が伝わってくる。語りが上手いか下手かも推理のしやすさを図るポイントになる。個人的におもしろかったのは『動機対機会』と『溺死』かな。

者による解説を読むと「短編向きの題材」というのがあるようで、それをクリスティーさんはうまく使っているのだという。一つ一つの事件は、その後の長編の下敷きになったものも多く、色々な作品に繋がっている。それに気付くのもまたおもしろいだろう。

編集はつまらない作品も入ってるのが普通なのに、これはどれもおもしろく満足度が高かった。事件を取り扱っているからそれなりに集中して読まなくてはならず、気軽に読める短編集だと侮ってはいけない。

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