書に耽る猿たち

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『生きるとか死ぬとか父親とか』ジェーン・スー|母が繋ぐ父と娘の絆

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『生きるとか死ぬとか父親とか』ジェーン・スー

新潮文庫 2021.3.10読了

 

ジェーン・スーさんという方、私が知ったのは最近なのだが、なかなかおもしろい方のようだ。自らを「未婚のプロ」と称し、生粋の日本人なのに外国人であるかのような名前をつけている。その理由も笑ってしまうから気になる方はググってみて欲しい。

ーさんは音楽プロデューサー、作詞家でありながらコラムニスト、エッセイストとしても広く活動されている。ラジオも有名なようだ。同世代の、つまり中年女性からの圧倒的な共感を得られて人気になっている。

24歳のときに母親を亡くしたスーさんはその後は家族といえるのは父親だけ。肉親なのに実は父親のことを何も知らないことに気づいた彼女は、父親の了承のもと、過去の出来事や母親との思い出、生きる哲学のようなものを父から聞き、エッセイにして書き連ねた。なんと、原稿料や印税はそっくりお父様のものになるらしい。

いていの女性が父親のことを「うざい」と思う中高生の頃、スーさんが類に漏れずそうだったのか、それともそんな時期がなかったのかはわからないけれど、比較的父親との関係性は良好といえる。そこかしこに父親への愛情が感じられるのである。そうでなければ父親を見て「この男にはなにかしてあげたいと思わせる能力がある」なんて言わないし、娘のスーさん自ら「この男を無条件に甘やかしたくなるときがある」なんて言わないだろう。

子はやはりどこかで似通っている。それは顔が似ているとか、体つきが似ている視覚的なものだけではない。思考や言葉遣い、癖も自然と重なる。同じタイミングで2人して左の奥歯がなくなっているというエピソードには、なんというか血縁の因果を感じた。

親のことを話しているのに、この作品には亡き母親の存在がとても大きいように思う。天国からスーさんのお母さまが2人を覗き込み、父と娘の2人が仲良くするのをきっと微笑ましく見守っているはずだ。

の作品は、4月からテレビ東京で吉田羊さん主演でドラマ化されるようだ。羊さんが黒縁メガネをかけるとスーさんの雰囲気に似ているかもしれない。ちょっと気になるなぁ。深夜帯の放送のようだし。