書に耽る猿たち

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『火刑法廷』ジョン・ディクスン・カー|導入部が素晴らしく引き込まれる

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『火刑法廷』ジョン・ディクスン・カー 加賀山卓朗/訳

ハヤカワ文庫 2022.2.13読了

 

刑法廷とは、17世紀のフランスで行われた裁判の一種で、魔女、毒殺者と目された人物を火刑にするために開かれた。被告は拷問に付され、死体は火で焼かれたとされる(Wikipediaより)。この火刑法廷を題材にしてジョン・ディクスン・カーがこの推理小説を作り上げた。カー作品のなかで最高傑作とも名高いから、ずっと気になっていた。

表紙のあらすじには「消える人影」「死体消失」「毒殺魔の伝説」と書いてあるから、超常現象満載なようでどうかな〜と思っていたが、これが読んでみると本格ミステリ要素もたっぷりでおもしろく読めた。編集者のスティーブンズが休暇を過ごすために電車に乗っている場面から始まる。最初の数頁読んだだけで引き込まれる。これは、導入部が本当に素晴らしい。

やはや、主人公であり語り手のスティーブンズの不安な様子が手にとるようにわかり、ゾクゾク感が半端ない。この不穏で霊的な空気感は何だろう!?謎が謎を呼び、そう来るかという展開に舌鼓を打つ。ちょっと荒唐無稽すぎる部分もあるけど、それも良さなのかな。 

想・怪奇小説とミステリが融合しているような作品。読んでいてもしかしたら…と思う犯人像がいたのだけど全くもって外れた(いつものこと)。一度読んだら忘れられない作品なのは確か。個人的に好きなタイプの作品ではないが印象には確実に残る。

賀山卓朗さんの訳もゴシック的なこの雰囲気に馴染んでおり、格調高い古典ミステリはやはり読んでいて気分が良い。それにハヤカワ文庫のフォントが目にも優しくちょうど良い。

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