書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

『ポケットにライ麦を』アガサ・クリスティー|物語として完璧|次に読む本の選び方

f:id:honzaru:20210128010550j:image

『ポケットにライ麦を』アガサ・クリスティー 山本やよい/訳 ★

ハヤカワ文庫 2021.1.28読了

 

に読む本はみんなどうやって選ぶのだろう?本がないと生きにくい私は、未読の本をだいたい数十冊ストックしておきそこから選ぶのだけど、毎日のように迷いに迷う。この迷いの時間を1週間合計したら1冊読めるんじゃないかと思うほど。迷う時間はある意味幸せな時間とも言えるが…。

った瞬間読みたくてもしばらくすると読む気が失せたり、気分が乗らないことはよくある。ひとまず買っておくという行為も本好きあるあるだと思う。選んでいて迷いすぎると何が読みたいのかわからなくなってしまい、あの手にするか!というのがクリスティー作品。まぁ、ハズレがないんですよね。ミステリから離れたい、という気分でない時はたいてい選ぶ。

して今回は記念すべき初読みミス・マープルシリーズ!ポアロばかり読み漁っていたけれどずっと気にはなっていた。新訳の『ポケットにライ麦を』に挑戦。マープルのキャラクターは、ポアロシリーズ『アクロイド殺し』に登場するシェパード医師の姉キャロラインから生まれた。ピーチクパーチクと鋭い推理を披露していたなかなかおもしろいキャラクター。

honzaru.hatenablog.com

ザー・グースの童謡になぞらえた殺人は、ミステリ界ではお決まりというか定番の仕掛けである。マザー・グースは日本人にはそんなに馴染みがないと思うのだが、この作品では「六ペンスの唄」という童謡がモチーフになっている。

かなかミス・マープルが出てこないから、ニール警部がこのまま謎解きをするのかと思ってしまった。絶妙なタイミングで登場するマープルだが、予想していたようなうるさ型のお婆さんではなかったのが驚きだ。編み物好きで気品があり、チャーミングなのに聡明な女性、すぐに好きになった。しかも、作品の中では脇役っぽいのに主役な感じが好きだなぁ。

回読んだクリスティーさんの作品は『スタイルズ荘の怪事件』というデビュー作だったからだろうか?この全盛期の本作はやはり腕が上がっている。優れた構成、無駄のない文章、巧みなストーリー展開。ミステリーとしてももちろんだが物語として完璧な仕上がりだと思う。もしかしたら今まで読んだクリスティー作品では1番好きかもしれない。

イトルを見るだけでライ麦パンが食べたくなる。私はハードなパンが大好きなので、ライ麦パンには目がない。噛み締めるたびに美味しさと香りが広がるパンの世界。本も噛み締めて読むと味わい深い。「珈琲とデザート」や「珈琲とパン」の組み合わせでの読書はサイコー!それにしても、昨夜悩んで選んだこの作品、ハズレがないどころか大当たりだった。