書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

角川武蔵野ミュージアムに行ってきた

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一度は行ってみたいと思っていた埼玉県所沢市にある「角川武蔵野ミュージアム」を先日訪れた。住宅エリアと自然が混在する武蔵野の地に2020年11月に出来た文化複合施設である。株式会社KADOKAWAが展開する「ところざわサクラタウン」の中に位置する、アート、文学、博物などを楽しめる総合ミュージアムである。

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まずは驚くのが外観である。建物は隈研吾さん監修、まるで要塞のようなゴツゴツした岩のような物体が存在感ありまくり。近くで触ってみると、分厚い石が貼られている。コンクリートの上に張り詰めたのだろうが、この複雑な立体に仕上げる技術は素晴らしい。いや〜、本当に圧巻の建物だ。

一番楽しみにしていたのがフロアの4階と5階部分を繋げて縦におよそ8メートルもの高さで本棚がそびえる「本棚劇場」である。一昨年の紅白歌合戦でYOASOBIがここで熱唱したことでこの施設が広く知られることになった。こんなに本に囲まれることはないので壮観ではあったのだ、けれども。

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実はテレビやネットを見て想像していたのと少し違っていた。もっともっと本が敷き詰められているのかと思ったし、古めかしい古書が多く内装もヨーロッパの図書館のようなイメージを想像していたのだ。あとは本の裏側(場所によっては裏側が通路や階段になっている)がベニヤ板感があり少し残念に思ってしまった。

この本棚劇場の景観は相当に「映える」ものなのだ。むしろ映え過ぎてしまう。映えるものは、実物を見て映え負けしないようにしなくてはならない。そういう意味では、いくら「映える」ようにして宣伝効果を高めても、実物がそれと同等もしくは超える感動を与えるために運営側が相当な努力をすることが必要なのだと感じた。何であれ、一度行けばいいや、一度食べればいいや、一度聞ければいいやと思ってしまうものは、一時期な流行りはあっても絶対に廃れてしまうから。

30分おきに、本棚を使ったプロジェクションマッピングが催される(ブログの最初の写真を参照)。暗闇に浮かび上がる本棚は神々しくさえある。本が燃えるという出だしの演出で、レイ・ブラッドベリ著『華氏451度』を思い浮かべた人は私だけではないだろう。

エディットタウンの一角にある荒俣宏さん監修「不自然な植物展」コーナーで、タブレットに映し出される「人間以外の生物の目から見る世界」が一番興味深かった。犬は白黒で世界を見ており、馬は意外と薄ぼんやりとした視界しかない。鳥や猿は結構目がいい。何より驚いたのが、甲殻類のシャコの視力が人間とほぼ変わらなかったこと。
いくつかのブースを満遍なく見学して、気づいたら4時間ほどがあっという間に過ぎていた。私が行ったのは平日で、1DAYパスポート3,000円というのを利用したのだが、少し高過ぎるかなと感じる。金土日はなんと1,000円増、ヒ〜。この時期にイベントで開催されていた浮世絵劇場の一コマと、隣接するサクラタウンで食べた「角川食堂」のランチをパシャリとしたので載せておく。

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ともあれ、この建物がなかったらきっと東所沢駅に降り立つこともなかったろうし良い機会になった。初めて訪れる場所はわくわくするし、それが本にまつわる場所であるならなおさらだ。割高な料金設定がちょっと心配ではあるけれど…。外観は間違いなく映え負けしていなかったし、内観も少しの企業努力で変えられる。本好きを増やすせっかくのチャンスなので、末長く運営されることを願うばかりだ。