『優等生は探偵に向かない』ホリー・ジャクソン 服部京子/訳 ★
お待ちかねの『自由研究には向かない殺人』の続編である。今年の初めに『自由研究〜』を読んでめちゃくちゃおもしろくて、次回作を楽しみにしていたから期待値半端なく読んだ。
続編でシリーズ2作めといっても、一続きの作品といっていいほど内容が重なっている。ピップとラディ以外の登場人物も前作とかなりかぶる。だから、これから読む人は絶対に前作から読まないとダメ。そうじゃないとおもしろさは半減すると思う。そして、間を置かずに続けて読むのがおすすめだ。
ピップは、友人のコナーから、兄のジェイミーが失踪したようなので捜して欲しいと依頼される。前回のこともあるから、もう事件には介入しない、高校生で探偵の真似事なんてしないと誓っていたけれど血が騒いでしまった。だって近くにいる人が助けを求めているんだから。
自分の仕事じゃないけど、自分の責任のような気がする。(中略)自分はジェイミーを助けられる唯一の人間じゃないかもしれないけど、いまここにいて手をさしのべられるのはわたしだけ。(191頁)
前作同様、ピップはSNSを通じて事件解決の手段とする。なんせ、前回の事件を解決した彼女には60万人のリスナーがいるのだから。この作品ではポッドキャストをメインに使う。ポッドキャストとは「iPod」と「broadcast」が組み合わさった造語で、音声や動画などのデータをネット上に公開する手段のひとつ。私は使ったことがないのだけれど、聞かせる方も聞く方も簡単に使いこなせそう。
現代のソーシャル・メディアがふんだんに使われている小説は個人的にそんなに好まないのに、どうしてだかピップの手にかかると不思議といい感じになるのはどうしてだろう。むしろ心地いい。このテンポがいいのかしら。もう私たちの日常生活に当たり前のようにあるからだろうか。
ピップは、その時々の心情を臆せずに文章にする。それが地の文であれ、メール、インスタ、ポッドキャスト、そしてファイルの中におさめた記録であれ。もう、読んでいる私たちも探偵気取りになり、少しづつ事件解決のために前に進んでいる感じがして、目が離せない。
ピップは誰が相手でも、最初に必ず挨拶を交わす。「ハイ!」「こんにちは」って笑顔で。声が聞こえてきそう。そんなふうに言われたら思わずこちらも返事をしてしまう爽快さ。この掛け合いがピップたらしめていると思う。明るさ、どんなことにも突き進む若さ、聡明さ、ピップの魅力は計り知れない。
期待を裏切らず文句なしにおもしろかった。めくるめくストーリー展開にワクワクさせられ、時に同情したり憤ったり。私としては珍しく犯人が結構早い段階でわかってしまったけど。三部作のようだからあと1冊あるみたいで、これも楽しみに待つのみだ。
それにしても、相棒のラヴィはなんて素敵なんだろう。今のところは探偵の相棒役で良きパートナーだけど、心は深いところで通じ合ってる2人。次作ではこの関係がさらに深まりそうでそれも楽しみだ。