書に耽る猿たち

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『ロリータ』ウラジーミル・ナボコフ|性愛小説ではないのよね|再読のすすめ

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『ロリータ』ウラジーミル・ナボコフ 若島正/訳

新潮社[新潮文庫] 2023.1.22読了

 

んとなく敬遠して読んでいない人は本当に勿体無いと思う。私はこの『ロリータ』を読むのは2回めだけれど、やはり傑作だと感じた。ドロレス・ヘイズ(愛称ロリータ)をその偏愛により愛し尽くし、やがては罪を犯したハンバート・ハンバートの長い長い告白による弁明である。

う、序盤の「ニンフェット」を語り尽くす場面ではいささか気分がげんなりして、特に女性であれば吐き気を催す人もいるだろう。この性癖、嗜好、変態さ加減がぶっ飛んでいる。この本が書かれたことで、多少似通った性癖を持つ人に自己肯定感を植え付けてしまった可能性もある。

れにしても、名前がハンバート・ハンバートっていうのがまた滑稽でこの小説を忘れがたく(まるで『嵐が丘』のヒースクリフのように)させる。日本人だったら高田高子さんとか、真琴誠さんとかになるのかな。

ンフェットの定義によると、期間は9歳から14歳まで。時間が止まらない限り、ハンバートはただ1人を愛し続けるということはできないのである。しかしその歳を超える前にドロレスは姿を消してしまう。3年後にニンフェットでないドロレスを見た時にまだ愛情があったならば、ハンバートはニンフェットを超えて1人の女性を愛したということになる。

様性の社会で、年齢差という垣根は大きな問題ではなくなっている。同性を好きになる人もいるし、動物を好きになる人もいる。世が世なら、というか将来的には肯定される時代が来るかもしれない。序盤にあんなに嫌悪感があったハンバートなのに、読み終える頃には気の毒に思えてくる。

ンバートが、つまりナボコフが弄んでいたのはニンフェット(=ロリータ)という形あるものではなく、もはや言葉そのものだったのではないか。言葉、文学を通してある男の鬼畜ぶりを、これでもかというほどの力量をもって書かれたこの文学作品に喝采を送りたい。

 

ボコフの小説は他に2作品読んだが、難解で私には良さを理解でなかった…。しかしこの『ロリータ』は紛れもない秀作である。今年は過去に印象に残った本を再読する時間を設けようと思っている。まずはこの『ロリータ』から。訳者のあとがきによると、ナボコフは「人は小説を読むことはできない。ただ再読することができるだけだ」(『ヨーロッパ文学講義』より)と述べている。読み返したときに初めて気付く小説の仕掛けと素晴らしさを堪能しようではないか!