書に耽る猿たち

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『十年後の恋』辻仁成|恋をしよう

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『十年後の恋』辻仁成

集英社集英社文庫] 2024.01.22読了

 

ランスに住むマリエは、10年ほど前に離婚をし、子育てをしながら仕事をする怒涛の日々を送ってきた。そんな中突然現れた歳上のアンリという男性。もう恋なんてしない(槇原敬之さんの歌を連想しますよね…笑)と思っていたのに。まるで女学生に戻ったように、自分のすべてが相手に翻弄される。恋をしている自分自身に恋をしているかのよう。とっても辛いのに、幸せなこのひととき。

 

の作品でマリエは「愛」と「恋」を明確に線引きしている、というか、したがっている。フランス語では「amour」一つしか存在しないのに、なぜ日本語には「愛」と「恋」が存在するのか。これに対しマリエの父親は名言を残すのだ。マリエは「恋」を求めるがどうなっていくのか、それがこの小説の肝となる。

 

ランス語と日本語ではニュアンスの違いからうまく訳せないということがあるらしい。「愛」と「恋」以外にも、例えば「絆」というのも、日本でいう意味合いとフランス語ではちょっと違っている。フランス語では「二つ以上のものを繋げるもの」を指す単語で日本語のそれよりも軽いイメージだ。こういう意味合いの違いや言語のことを考えると、国際結婚ってとてつもなくすんごいことなんじゃないかって思う。いやでも、恋に落ちたらそんなのは関係ないのかな。

 

の反対が憎しみでも無関心でもなく、愛には反意語が存在しないという考えにストンと落ちた。無償の愛というのは、やはり見返りを求めない愛ということなんだ。

 

性のあまったるい心理を余すところなく紡いでいく文体は、およそ男性が書いたとは思えない。恋愛小説が苦手な人にはちょっとキツイかも。マリエの恋のもやもやにずっと付き合わないとならないから。私も正直、こんな感じが最後まで続くのかな…と思っていたが、迂闊にも最後はホロリとしてしまった。やっぱり辻さんの文章は好きだ。

 

だひとつ確かなのは、何歳になっても恋愛って良いものだということ。人が生まれてから死ぬまでに一体どれだけの人を好きになるだろう。それが1人の人もいれば、何十人にもなる人もいる。相手の「好き」という感情を自分の「好き」とは測れないから、それがまた燃えさかる恋の原因なのだろう。

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