書に耽る猿たち

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『ミステリウム』エリック・マコーマック|この幻想的、怪奇的、魅惑的な雰囲気を味わうべし

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『ミステリウム』エリック・マコーマック 増田まもる/訳

東京創元社[創元ライブラリ] 2024.01.21読了

 

ういう幻想的かつ怪奇的、そして魅惑的な世界観ってどうやったら書けるのだろう。イギリスを筆頭にして幻想文学というジャンルがあるけれど、彼もスコットランド出身だからその流れを受け継いでいると思う。日本でいうと、山尾悠子さんなんかがこのジャンルなのかな。まだ彼女の作品は読んだことがないけれど、根強いファンが多いイメージだ。

 

る炭鉱町に水文学者を名乗るカークという男性が現れてから、不審なことが次々と起こる。住人たちは奇怪な病で次々と亡くなってしまう。果たして、ここでは何が起きているのかー。なんだかクトゥルー神話の世界観に近いかもしれない。ぞわりぞわり、見えない恐ろしさが満載。

 

政官ブレアから、首都の新聞社でアルバイトをする記者の卵であるマックスウェルに事件の取材の依頼が入る。マックスウェルはその町に行き、多くの人にインタビューを行い事件の謎を解こうとする。

 

が本当のことを話しているのか、果てはブレアやマックスウェルもどことなく信用に欠けるような不審さ持ちながら物語が展開される。「この話は何かの暗喩なのだろうか?」とか「ちゃんと伏線回収されるのか?」と思いながら読み進めるが、実は関係のない挿話だったりして、どうやらこれがマコーマックらしさのようだ(訳者の増田まもるさん、解説の柴田元幸さん曰く)。小さなエピソードがまたおもしろい。ブレア行政官とヴェロニカの愛のエピソードには切なさが募る。

 

局この物語がどう着地するのかは、なんというか、、正直よくわからないのだが、この作品は雰囲気を味わうものなのだというのが私の結論。4年ほど前に読んだ『雲』のほうが私は好きかな。

 

元ライブラリと創元推理(または文芸)文庫は一緒かと思っていたけど、どうやらレーベルが異なるみたい。〈国内外の名著をジャンルを問わず簡便な文庫というスタイルでお届けするという趣旨〉とのことで、つまり早川でいうところの〈ハヤカワepi文庫〉というところか。

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