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『星月夜』李琴峰|漢字は読みたいように読んでもいいかも

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『星月夜(ほしつきよる)』李琴峰(り・ことみ)

集英社集英社文庫] 2024.01.30読了

 

本語って本当に難しいと思う。最初に出てくる日本語の文法問題では、私たち日本人なら当たり前にわかることでも、多言語を使っている人からしたら相当難しいだろうなとつくづく感じる。言語って勉強しようと思って身につくというより慣れるしかないものだと思う。まさに「習うより慣れよ」だ。

 

を歩いていて、電車に乗って、飲食店でご飯を食べて。隣にいる人が日本人ではないことなんて、今はざらにある。30年くらい前には、外国人がいるだけで振り向いてしまったのに。中国人、台湾人、韓国人、ベトナム人。昔はアジア人だとほぼ中国人だったのに、結構な確率でベトナム人が多いような気がする。

 

湾出身の日本語教師と、新疆ウイグル地区から留学してきた女性同士の恋愛と言語にまつわる話。最初は語り手が誰なのかわからなかったが、交互に視点が入れ替わっていると気付く。その境目が星と三日月マークで区切られているのだ。2人の名前が星と月にちなんでいるから。

 

イトルの『星月夜』は、本来なら「ほしづきよ」と読むのが正しいのだろうけれど、あえての「ほしつきよる」としている。その理由は作品を読むとわかる。それはそうと、間違えた漢字の読み方をする人に対して今までは「そんなことも知らないの?」とどこかで嘲笑う自分がいたけれど、特に日本語を母国語としていない人については、読みたいように読んでもいいのでは?と少し考えを改めた。ある意味漢字の良いところでもあるから。

 

琴美さんの小説を読むと、自分が日本人であること、日本語という言語のことを深く考えさせられる。日本人以上に美しく繊細に書かれた文章からは、一日一日を丁寧に生きることの大切さを教えられるようだ。ただ、李さんの小説はほとんどが同じテーマのものなので、違うテーマを取り扱った作品を読んでみたいかな。

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