書に耽る猿たち

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『シャーロック・ホームズの凱旋』森見登美彦|ワトソンなくしてホームズなし

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シャーロック・ホームズの凱旋』森見登美彦

中央公論新社 2024.02.03読了

 

もそも、ホームズとワトソンが何故京都にいるんだ?そして、ホームズがまさかのスランプだと?寺町通二条通四条大宮に嵐山、南禅寺下鴨神社、、京都の名だたる名所を駆け巡る…。これは一体何なのだ!?日本の、それも歴史ある街並みにイギリス人らしき人がいる違和感。でもそんな気持ちもいつの間にか気にならなくなって森見ワールドにずぶりと引き込まれていく。

 

リアーティ、ハドソン夫人、メアリーなど、お馴染みの登場人物たちがわんさか登場する。ホームズものを全て読んだわけではないけれど、登場人物の名前には見覚えがあって、懐かしさを感じつつ、ズッコケおとぼけホームズには親しみがわく。

 

の作品は5つの章にわかれており、本家のホームズの短編集さながら、それぞれ事件のタイトルのように名付けられているのだが、一つづつ事件を解決するような短編にはなっていない。そもそも、推理小説にみせかけているけど違っていて、そしてこれは全体を通した長編小説である。

 

分に何かスランプが起きた時、または何かに自信をなくした時、はたまた何もかもうまくいかず投げ出したくなったとき。そんなときはこのグータラホームズを見習うがよい。なんだかちょっと元気が出てくる。ホームズだってこんな風になるんだと。そして何度も出てくる「ワトソンなくしてホームズなし」、どんなに成功した人物であろうとも、その人だけの力ではなり得ない。相棒であれ、家族であれ、仲間であれ、必ず支えとなる人がいる。名脇役こそ主役同然だ。

 

ャーロック・ホームズのパスティーシュといえば、昨年読んだ『辮髪のシャーロック・ホームズ』もおもしろかった。いや、そもそもこの森見さんの作品はパスティーシュといえども推理ものではないと断言できる。まさに森見ワールド。

 

森見登美彦さんの作品を過去に2冊ほど読んだときに、自分にはあんまり合わなかったので敬遠しがちになっていた。でも、先日万城目学さんのX(旧Twitter)でこの『シャーロック・ホームズの凱旋』を買ったという記事を見つけて、「おぉ!万城目さんが買うなら」と勇み足に。万城目さんでも本を買うことにも驚いたけれど。なんとなくあれだけの作家さんなら出版社から貰えたりするものなのかなと(本当は貰ってるかもなぁ)。

 

の作品の舞台が京都というのも万城目さんを夢中にさせたのかも。歴史上の実在の人物の名前が出てきたら、もしかしたら万城目さんの作品にもちょっと似ているかなぁなんて。ファンタジックだし。まぁでも、読んで良かった。なんだか京都に行きたくなってきたし、本家本元のホームズものも読みたくなってきた。

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