『プリンシパル』長浦京
新潮社[新潮文庫] 2025.03.10読了
玉音放送がラジオで流れた日に、実家の父親が危篤との報を受けて実家に戻る綾女(あやめ)。ヤクザ稼業を嫌い家を出て教師を勤めていたが、やむを得ず父亡きあとを継ぐことになる。女性でありながらも戦後日本のヤクザのトップに立った彼女の生き様が力強く描かれた作品である。
青池家の惨殺のシーンがかなりグロくてキツかった。この事件をきっかけとして綾女は家を継ぐ決意をするのだが、理由は復讐をするため。それが叶ったら死をすんなりと受け入れる覚悟だ。もはや殺してほしいと何度も願う。綾女が政府やGHQにも立ち向かう姿がカッコよくて惚れ惚れする。
昭和20年代からの物語ではあるが、どうも現代モノのように思えたのは、綾女の醸し出す雰囲気だろうか。会話での言葉使いだろうか。カギカッコ(「」)で表される会話文が連続する箇所が多かった(個人的にあまり好きではないのだけれど)のだが、長浦さんの小説はいつもこうなのか、またはこの作品だけなのかしら。
長浦京さんの小説はずっと気になっていたから読めて良かった。それにしてもこの本が任侠ものだったとは全く知らず…。確か単行本の表紙はバレリーナだったような。人気の作品で高評価のようだけれど、私としては期待していたものとちょっと違っていた。他の作品を読んでみないとなぁ。
今月の新潮文庫の新刊(正しくは2/28発売)は、興味を惹かれるものが多くて6冊ほど買ってしまった。しかし読む本が溜まってしまっている。読むペースより買うペースのほうが明らかに早いからにゃ〜。