『若草物語』オールコット 松本恵子/訳
新潮文庫 2020.3.2読了
子供の頃に夢中になった物語をまた読み返してみたいと思うことはないだろうか?まさしく私にとって今ちょうどそんな時で、書店に平積みされていた本書が目に留まった。今月末から映画化されるため、小説も売り出し中のようだ。
多分夢中になっていたのは小学校低学年の頃。テレビアニメもやっていたから余計に記憶に残っている。昔読んだのは少年少女向けのもっと分量が少なくて簡単なものだった。新潮文庫から出版されている本作は、大人も楽しめるようにか結構細かく訳されている。
子供の頃は自分が幼くて年齢も近かったからか、四女エイミーに共感していたような気がする。おしゃまなエイミー。あとは男勝りなジョーのことも大好きだった。当時は知らなかったが、ジョーは作者であるオールコット自身を投影しており、自らの体験を元に小説にしたものらしい。
ところどころ忘れていたが、大まかなストーリーは覚えていた。改めて感じたことは、男勝りなジョーが実は一番女性らしく繊細な心の持ち主であること。そして、いつの時代も女性が考えていることは同じなんだということ。軍務で戦地に赴いてる父親がいるということは、南北戦争辺りの時代だろうか。昔ながらの風習、考えがはびこっているとおもったが、四姉妹の母親はこう話している。
不幸な人妻、あるいは夫を捜し騒ぐ乙女らしくない女性であるよりも、むしろ幸福な老嬢で果てたほうがましです。誠実な愛人は相手の貧乏にひるみはしません。(中略)わたしどもは、あなた方が結婚しても、あるいは独身であっても、常に親の生涯の誇りであり、慰めであることを信じ、望んでいるのです(194頁)
今でこそ結婚が全てという考えは薄れ、個人を尊重するようになってはいるが、この時代からこのように考える母親はそんなに多くないのではないだろうか。自分の子供たちがどんな生涯を歩もうとも、味方であり誇りに思う両親がいる、慈愛に満ちた家庭である。
物語を通して悪者が登場しないところ、最後にはハッピーエンドになるところが、少女向けの小説である。大人が初めて読んだとしたら物足りないだろう。しかし、幼少期に好きだった本を大人になってから再度読み直すことは非常に意味があると思う。不思議なことに、見えてくるものが違う。そして、自分自身を振り返ることが出来るのだ。