書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

『荊の城』サラ・ウォーターズ/騙し騙されて

f:id:honzaru:20200328211439j:image

『荊(いばら)の城』上下  サラ・ウォーターズ  中村有希/訳

創元推理文庫   2020.3.31

 

み始めたらすぐにディケンズの『オリヴァー・ツイスト』が出て来た。つい先日読んだばかりだから、盗賊ビル・サイクスの名前も覚えていた。そう、この『荊の城』は、イギリスが舞台のミステリーなのだ。

はり色々な国の本を読んでいくうちに、米国らしさやヨーロッパらしさのような、国や地域による違いも小説の中でわかるようになってくる。英国はとりわけ特徴的で、なんというか、スマートできちんとした紳士感がある。そして孤児や泥棒、家政婦や執事が登場することが多い。

児で掏摸(すり)のスウが、紳士と呼ばれる知人の詐欺師に誘われて、ある古城に住む女性相続人を騙し大金を手に入れようと目論む。スウは、貴婦人の侍女となるためにブライア城(荊の城)に向かうのだが、そこで果たして何が起きるのかー。

を書いてもネタバレのようになってしまうのだけれど、まさかのどんでん返しがあり、騙し合いがあり、この先どうなっちゃうの!?と続きが気になる読書体験が出来る。サラさんは、ミステリ、ストーリーテラーとしての才能があり当時は話題だったようだ。

む前から個人的にあまり合わなそうだなと思っていたし、実際読んでみても、やはり好みの文章や文体ではないのだけれど、キレのある絶妙な短文のせいで早く早くと自然に焦らされる。創元推理文庫の小さい書体もなんのその、どんどんスピードアップして読了。

ラ・ウォーターズさんは自らレズビアンであると公表してある。そのせいか、小説内でも百合漂う場面が生々しく表現され、同時に女性への敬意が表れているように思う。元々作者のことは知っていたが未読だったのだが、先日北上次郎さんの本を読んで、この『荊の城』を絶賛していたから読みたくなったのだ。 

honzaru.hatenablog.com