『ゴルフ場殺人事件』アガサ・クリスティー 田村義進/訳
エルキュール・ポアロシリーズ1作目『スタイルズ荘の怪事件』に続く2作目である。ポアロの友人ヘイスティングスが語る構成は、初回と同じである。それにしてもヘイスティングスはなんとおっちょこちょいというか、間抜けというか、素直すぎるというか…。ポアロにも「きみは相変わらず頭を使わずに話しているね」と言われてしまう。ま、そんな2人のコンビが読んでいておもしろい。
南米の富豪ルノー氏から不穏な手紙を受け取ったポアロは、ヘイスティングスとともに急いでフランスを訪れる。しかし到着した時にはルノーは無惨にも殺害された後だった。ポアロは事件の解明に挑む。全然ゴルフ場が出てこない!と思っていたら、、一応登場するのだけれど小説のタイトルにするほどもないよな〜と思う。
この作品のおもしろいところは、パリ警視庁の刑事ジローとポアロがそれぞれ推理を展開し、事件を解決すべく競い合うかのようにしているところ。ポアロが他の誰かと敵対心剥き出しにしているのが新鮮だった。あとは終盤にポアロとヘイスティングスが2人で推理を披露し合う場面も、掛け合いが楽しい。
フランス語のムシュー、モナミ、エ・ビアンという単語がちらほらと。ベルギー人にはフランス語訛りがあるということはあとがきを読んで初めて知った。ムシューはよく聞くが、「モナミ」は「愛する人、私の友人」の意味、「エ・ビアン」は、「それでは、はい、よし」などの意味のようだ。これまで私が読んだポアロものでは気にならなかったけれど、訳者の田村さんが訳さずにそのまま残しているのだろう。クリスティー作品は色々な方が訳されているので、それぞれの訳の特徴を感じるのもなかなかおもしろい。