書に耽る猿たち

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『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』フィリップ・K・ディック/人間とロボットの違いは何なのか

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アンドロイドは電気羊の夢を見るか?フィリップ・K・ディック  浅倉久志/訳

ハヤカワ文庫  2020.5.14読了

 

リソン・フォード主演映画『ブレードランナー』の原作で、SF小説の金字塔であるあまりにも有名すぎる本作、私はまだ未読だった。映画も観ていない。いつかは読もうと随分前から思っていたけれど、どうもSF作品は苦手でここまで来てしまったのだ。しかしここ数年、ようやくSFの面白さが少しづつわかり始めた。お正月に読んだ小川哲さんの『ゲームの王国』は目から鱗だった。

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3次世界大戦後のサンフランシスコが舞台である。警察組織に勤めるリック・デッカードは、火星から脱走してきた新型高知能アンドロイドを処理する(殺す)任務を遂行するために立ち上がる。それには懸賞金もある。手に入れた懸賞金で、本物の動物(ペット)を飼いたいのだ。今飼っているのは電気羊だから。

ンドロイドにも人間と同じような感情は存在するのか?だとしたら人間とロボットの違いは何になるのか?この小説でディックは「人間とは何なのか」を暗に問いかけている。

50年くらい前に書かれた小説だが、まずこの世界観がぶっ飛んでいてカッコいい。アンドロイド(人間型ロボット)がはびこる世の中は想像できるが、動物も人造である。電気羊や電気馬に電気フクロウ、人造ペットがたくさん作られている。それでも人間は本物のペットを欲している。良かれと思い人造を生み出した人間であるはずなのに、結局は本物を好むという矛盾。

より、この小説のタイトルのセンスが素晴らしい。人間が羊の夢を見るのと同じように、アンドロイドは電気羊の夢を見るのであろうかと。羊にしたのも、きっと寝るときに「羊を数えて眠る」ことにかけているのだろう。

は、電気羊の夢を見てみたいと思った。人間が電気羊を本物のペットのようにしてもいいと思う。だってどうだろう、ディック氏が執筆してから50年、aiboなんて本物のペットと変わらずに飼われているではないか。未来は確実に変化していくのだ。