書に耽る猿たち

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『予告殺人』アガサ・クリスティー|殺人をお知らせします

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『予告殺人』アガサ・クリスティー 羽田詩津子/訳

ハヤカワ文庫 2021.6.7読了

 

る地方新聞誌の朝刊の広告欄に殺人の予告が出る。これがこの小説の始まり。新聞の広告といえば、求人だったり人探しだったり、昔はペンフレンド募集なんてのもあった気がする。今はこういったものがすべてネット上で行われているから新聞にはほとんど載っていないだろう。殺人予告ならぬ仄めかしは、今やTwitterがお決まりだろうか。

のタイトルを目にした時、すぐさまガルシア=マルケス著『予告された殺人の記録』が思い浮かんだ。しかし内容は全然違う。マルケスさんのほうは一風変わった小説であるが、この『予告殺人』はまさしく、誰が犯人か?なんの目的で?を解いていくザ・古典的ミステリーである。

入部から引き込まれる。新聞紙面で殺人を予告するなんて、いたずらなのか本当に起きるのか半信半疑の街の住民たちは、興味津々で舞台となるリトル・パドックス(女主人レティシアブラックロックの家)に集まる。予告された時間に真っ暗になり銃声が轟き、気付いたら1人の男性の死体が転がっていたのだ。

ス・マープルという老嬢探偵が活躍する最後の謎解きはお見事。小説自体の内容はミステリの性質から何も語れないが、是非読んで楽しんでもらいたい。そもそもマープルよりも事件を捜査していくのはほとんど地元警察のクラドックである。誰をも満遍なく疑い、ひとつひとつ謎をクリアしていく姿が、なるほど警察らしいなぁなんて思いながら。

の小説はクリスティー作品のうち「ミス・マープル」シリーズの4作目。初めはマープルシリーズを敬遠していたけれど、先日『ポケットにライ麦を』を読んで、老婦人マープル、なんて愛おしい方なんだ!とすぐさまファンになる。ポアロだけじゃないのねと。ノンシリーズもいくつか読んだけれど、個人的にはポアロやマープルのシリーズものの方が好みだ。次は短編集を読んでみようか。

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