書に耽る猿たち

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『片隅の人生』サマセット・モーム|人生も船旅のように

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『片隅の人生』サマセット・モーム 天野隆司/訳

ちくま文庫 2022.2.1読了

 

ームさんの作品の中ではあまりメジャーではない『片隅の人生』を読んだ。中国福州で医師を務めるサンダースは、ある患者の白内障手術をするためにマレー諸島南端に長期出張をする。手術後、退屈気味のサンダースはニコルズ船長とその仲間のフレッグと出会い、彼らの船に乗り船旅を始める。

るで自分も航海に出ているような気分になった。旅先独特の新たな出会いと新しい風景。たゆたう波のように様々な人と出会い、人間観察をするサンダースは独自の人生哲学を読者に披露するのだ。

党ニコルズも、正体不明の美貌のフレッグも、なんとも魅力のある人物として書かれている。サンダースの目に映るものや人物は、一癖も二癖もあったとしても不思議と最後は「まぁ仕方ないな」と許せてしまう。おそらくサンダース(もはやモームさん自身か)は、人の長所を見つけることができる稀有な人物なのだ。

んな人間の人生であれ、この世の中ではほんの片鱗に過ぎず、人間は心の平安を求めて自由に穏やかに暮らすことが1番だと説いている。「人間とは何か」「人生をどう生きるか」を作品のテーマにするモームさんらしい小説だった。

だ、ちょっと期待しすぎたかもしれない。過去に読んだモーム作品の『月と六ペンス』『人間の絆』『お菓子とビール』がどれも絶品すぎたから、少し物足りなく感じてしまったのだ。あと手元にあるのは短編集と掌編集なので、また折を見て気軽な気持ちで読もうと思っている。

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