(2022.06 村上春樹ライブラリーにて)
1年が経つのは本当に早い…。年々そう感じるのだけれど、ブログを始めてからはなおのことそう思う。毎日ではないけれど、読んだ本の感想やらあれこれを日記のように文章にして残していると、たまに振り返ったときに、この本この間読んだつもりがもう2年前だったのか、などなどついつい読書感傷(私が作った造語)に浸ってしまう。読んだ本で歳月を図るという、読書好きあるある。
今年もやるかどうしようか迷ったのだけれど、せっかくなので。昨年2022年に私が読んだ本のなかからおすすめ10作品をここに紹介。読んだ作品は169作品(紙の本の冊数は181冊)。一昨年より少し少なめか。昨年同様、私が読んだ本を「独断と偏見」によって10作をピックアップした。ランキング形式ではなく、読んだ順に載せる。読む本に迷っている方、最近良い本に出会えていないなと感じる方に、是非参考にしてほしい。
1作目
『女には向かない職業』P・D・ジェイムズ
読んだときには「おもしろい!」ともちろん感じてはいたが、正直なところベスト10に入れるほどとは思わなかった。でも、私がP・D・ジェイムズさんの作品を初めて読み、その英国ミステリの濃厚な世界観にどっぷりとはまり、今年だけで彼女の作品を5作読むきっかけになった記念すべき小説なので、迷った挙句堂々とランク入りさせた。何故かコーデリアのシリ―ズはこれと『皮膚の下の頭蓋骨』の2作で終了という残念極まりないのだけど、ダルグリッシュ警視ものよりも私は好きだなぁ。
2作目
『人間の絆』『人間のしがらみ』サマセット・モーム
もともと過去に読んだことがあり再読だったわけだけど、この長編を訳を変えて今年だけで2回も読んだという、それだけで愛すべき作品だということがわかっていただけるだろう。金原瑞人さん訳も、河合祥一郎さん訳も、どちらも良い。死ぬまでにあと2〜3回は読むだろう。かけがえのない人生を味わい深くするために。
3作目
『緑の天幕』リュドミラ・ウリツカヤ
現代ロシア作家の1人。ノーベル文学賞はアニー・エルノーさんが受賞された(彼女の作品も良かった)が、読書界隈では受賞候補に挙がっていたウリツカヤさん。今もなお続いているウクライナとロシアの戦禍の影響もあるが、最近ロシア関連の作品はよく売れている。現代ロシア作家のなかでは群を抜いており濃厚な物語世界を存分に味わえる。
4作目
『象の旅』ジョゼ・サラマーゴ
おもしろいというよりも大好きな作品。そばに置いてあるだけで心温まる、装幀も素敵な象さんと象使いのお話。横浜市内にこの本と同名の書店がつい最近できたようで、まだ行けてないけど早く訪れたい。選書とか絶対気に入るはず。
5作目
やっと出てきましたね、日本人作家の本。といってもこれが出版されたのは1971年とかなり古い。読むきっかけとなった、ふいに流れてきた万城目学さんのツイートに感謝しかない。本屋大賞発掘部門の『破船』(吉村昭著)とどちらを入れるか迷ったが、「リーダーシップとは何か」など経営の指南書としても優れていると感じてこれを選んだ。
6作目
『無垢の博物館』オルハン・パムク
美しすぎて悶絶、発狂。読んでいる間はもちろんのこと、読み終えたあともしばらく放心状態が続き、他の本を読みたくなかった。パムクさんの新刊『ペストの夜』も既にストックしている。読まれるのを着々と待っているようだけど、なんだか勿体無くてまだ手をつけられていない。
7作目
『水平線』滝口悠生
去年も滝口悠生さんの作品をランク入りさせていた。もう、語りの美学が溢れ出ている。日本の現代作家で5本の指に入るほど好みだ。ずっと読み続けたい心地よさがある。私のなかでは堀江敏幸さんのような感じ。あと同じ滝口さんの本で、同じく去年読んだ『高架線』という作品も良かった。
8作目
『地図と拳』小川哲
ナウで売れている『君のクイズ』よりも断然こっちのほうがいい。歴史的な要素も多いから、なんとなく男性のほうが好みそうな作品である。分厚い単行本だけど、出てくる人たちみんなが漢らしくカッコよくて惚れ惚れする。
9作目
『自転しながら公転する』山本文緒
山本文緒さんの本は何年も前にハマっていた。『群青の夜の羽根毛布』を初めて読み彼女の作品に心を鷲掴みにされ、若い時分だったので恋愛ものを中心に読んでいた。この作品は、あの名作『恋愛中毒』と同じくらい好きな作品だ。平易な文章で書かれているのに、心に響くものは大きい。山本さんの新刊を読むことは叶わないが、彼女の作品は今後も読み継がれることは間違いない。
10作目
『統合失調症の一族 遺伝か、環境か』ロバート・コルカ―
小説ではない本で唯一ランクインしたのがこちらの作品だ。めちゃめちゃおもしろかった。こんな家族が実在するなんて、事実は小説よりも奇なりとはまさにこのこと。早川書房さんは小説もノンフィクションもめちゃめちゃ頑張っている。今年も新刊から目が離せない。
2022年の読書もとても充実したものとなった。本を開かない日はないほど、私にとっては食事・睡眠と一緒で生きる上で欠かせないもの。ただただ読書が好きなんだから仕方ない。でも、こんなにも手軽に自由に幸せを感じられるなんて、読書好きで本当に良かった。
安定のアガサ・クリスティー作品、ホリー・ジャクソン著『自由研究には向かない殺人』シリーズ、M・W・クレイヴンのワシントン・ポーシリーズも楽しかった。年々、海外小説に傾倒していっている気がするなぁ。昭和の日本文学も大好きなのだけど、あまり読む機会がなかった。
再読欲求が最近高まっている。素晴らしい本は、一度読んだ時に「また読むだろう」と予想できるのだが、そこまで感銘を受けなかった本でも、数年経つと不思議とまた読んでみたくなることがあるのが不思議である。
今年も皆さまにとって素晴らしい読書ができますように。世に、書に耽る猿たちが増えますように。
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