書に耽る猿たち

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『君のクイズ』小川哲|多くの読者を獲得しているはず

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『君のクイズ』小川哲

朝日新聞出版 2022.12.26読了

 

ディアに取り上げられたり色々なところで紹介されているから、小川哲さん史上一番売れているのではないか。こんなに宣伝しなくても、小川さんの作品なら読むのに!って思う。『ゲームの王国』で心を鷲掴みにされて、読む本はどれも当たりでおもしろいのだ。なんせ、彼の思考回路は天才過ぎる。

もテレビのクイズ番組が好きなクチだった。出演者が芸能人であるものよりも、一般人が出るような番組が良い。モノマネでもなんでも、プロよりも一般の人がやるほうが、事前知識がない分絶対におもしろい。一般人はメディアに慣れてないのも良い。今は圧倒的にテレビよりもYouTubeの時代だけど、それもこの「一般人に近い人ならではのおもしろみ」が影響している。

 

レビの新番組『Q-1グランプリ』の最終問題で、本庄絆(ほんじょうきずな)は問題文が一文字も読まれていない早押しクイズに正答した。何故かー。ヤラセなのか魔法を使ったのか。あるいは、何か正当な根拠があって答えを導き出せたのか。同じくクイズプレイヤーである僕、こと三島玲央(みしまれお)はこのクイズに挑む。

イズは知識がたくさんあれば解けるわけではない。もちろん前提としてふんだんな知識が求められるが、クイズ番組では早押しの極意、わかりそうなタイミングでボタンを押す、そして先手を読み、ある種の恥ずかしさを捨てて果敢に挑むことが大事だ。この作品、どんな結末になるのかと先が気になり、ミステリというよりもゲーム間隔で読み進める感覚だった。

までの小川さんの作品の中ではダントツに読みやすい。1日で、いや、ものの1時間かそこらで読めると思う。私はいつもの小川さんの蘊蓄たらしいまどろっこしさが好きだし、読んでる最中にもっと知的興奮を感じたい。とはいえ、このスリルと普通の人にはない着眼点でまたしても新しい小川哲ワールドを見せてくれたことに、さすがだなと思わずにいられない。エンタメ性に優れたこの作品は、多くの読者を獲得しているに違いない。

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