書に耽る猿たち

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『パディントン発4時50分』アガサ・クリスティー|隣を走る列車の殺害現場を見てしまったら

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パディントン発4時50分』アガサ・クリスティー 松下祥子/訳

早川書房クリスティー文庫] 2024.01.19読了

 

行して走る電車をぼうっと見てしまうことは誰しもがあるはずだ。私が住む関東では、JR東海道線京浜東北線はほぼ同じ車窓、隣の線路を走るから、時折り速度を緩めているとゆらゆらと揺れながら隣の車両の中を見ることができる。または、並行して走っていなくても、駅に止まった反対側の車両をまんじりともせずぼうっと見てしまうことがある。

 

かしたいていは「覗こう」として見ているわけではないから、その場でなんとなく目を向けてしまうだけ。ただ視覚に入ってしまうだけ。だから、たぶん10分後には忘れてしまう。しかし、それが殺害現場だったらどうだろう。マープルの友達のマギリカディがそれを目撃するという衝撃的な場面から物語は幕を開ける。

 

ープルはルーシーにこう言う。

「こんなふうに感じちゃいけないのかもしれませんが、仮説を立てて、それが正しいと立証されるのは、やっぱりうれしいものね!」(73頁)

マープルでなくてもこういうのはみんな嬉しくなると思う。私も年明けに観たテレビドラマで、推理が鮮やかに当たったときは、なんとも誇り高い気分になった。マープルが言うには、推理ではなく「マーク・トウェインを読めばわかる」のだそう。

 

イトルから推測するに、「この時間の列車に乗っていたらあんなことは起こり得ない」とか「アリバイが成立しない」とかそんな方向に話がいくのかと思っていたら全然違った。そもそも、列車から犯行現場を目撃したマギリカディはちょこっとしか登場しないからね。

 

しぶりにクリスティー作品を読んだ。まぁ、期待を裏切ることなく鉄板だ。マギリカディはおろか、ミス・マープルですらほとんど登場しないのだけれど、そんなのは気にしない。クリスティー作品では結構ある。この作品の主役はもちろんスーパー家政婦ルーシー・アイルズバロウだ。なんて潔くてカッコいいんだろう。

 

ス・マープルもの、結構読んでるなぁ!今まで読んだ中では『ポケットにライ麦を』が一番おすすめ。

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