『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』川上未映子
挑発的なタイトルと表紙である。この本は「詩集」とジャンル分けされている。頁をめくると確かに詩に見えるものもあるが、短編のようにも感じられる。『乳と卵』で芥川賞を受賞した翌年に刊行された本で、表題作を含めた7つの作品が収められている。
表題作『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』は、中原中也賞(詩の賞にはあまり詳しくないけれど…)を受賞された。圧倒的な迫り来る濡れた文体が脳髄を刺激する。女子の先端とはつまり挿入されうる先端であり充血し膨らむところ。一見卑猥なのに、川上未映子さんにかかると文学的センスと洗練された文盲癖でもはや神々しく思えてくる。
人間が一生のうちに信号を待つ時間がどれくらいかなんて考えたこともなかった。半年だって。半年って、かなり長い時間だよなぁ。真剣に信号を睨むことはないが、ぼうっとただただ青になるのを待つ時間。ニューヨーカーなら信号無視が当たり前だから、その時間は結構短くなるのだろうか。
全て読んで思ったのが、川上さんが物を書き始めた頃は、母親と娘の関係性を書いたものが多かったのだということ。『ちょっきん、なー』は、『乳と卵』や『夏物語』に、繋がっているように思える。また、尿意、便意、性交など、身体の生理現象を表した内容が多かった。心の内にある想いを、衝動的に文章にして発散させたのだろう。今の川上さんにはない躍動感が沸々と湧き出でいた。
川上さんの大阪弁って大好き。大阪弁のなかでも鋭くて美しくて、それでいてあたたかい独自の文体を築いていると思う。タイトルも大阪弁でこれもまた良き。