『フォース・ウィング 第四騎竜団の戦姫』上下 レベッカ・ヤロス 原島文世/訳
早川書房 2024.10.27読了
騎手科に入るためにまずは細い不安定な橋を渡り切らなければならない。落ちたら即死だ。実際に毎年何人かの死者が出る。橋の手前でこれから友になりそうな人物と言葉を交わすが、1人の名前は登場人物紹介の栞に名前がない。きっと橋から落下するのだろうと想像する。こんなスリリングな場面から始まるこの物語は、この先の息もつかせぬ展開を予感させるかのようだ。
子どもの頃に、映画館で『クリフハンガー』という山岳映画を観たことがあり、冒頭の(すでに)クライマックスシーンのような場面を観たのを思い出した。小説を字で追っているのに、最初から脳内で映像化されるほど壮大な風景が目に浮かぶ。
ナヴァール王国の軍人はバスギアス軍事大学で訓練を受ける。書記官になろうとしていたヴァイオレットだが、司令官の母の命令で騎手科に入ることになる。厳しい訓練を生きて卒業できるのは四分の一だという。所属することになった第四騎竜団の団長ゼイデンに惹かれていくヴァイオレットはどうなるのかー。
性描写がなかなかきついという声も多いのでおそるおそるみたいなところもあったけれど、まぁ確かに電車の中で思いっ切り本を開きにくい雰囲気がある。どちらかというと会話が下品に感じた。会話文でなく字の文であれば、そこまでではないのに。やっぱり性的なものって声にしてしまうと一気に冷めるというか。しかし訳すニュアンスにもよるだろうし、アメリカと日本の風俗の違いもあり、そもそも性教育も異なるから読者の受け止め方も難しいところだ。
手に汗にぎる展開に目が離さず、ついでヴァイオレットとゼイデンの恋の行方、そして幼馴染のデインとの関係が気になり上下巻にも関わらずあっという間に読み終えた。確かにここまでハラハラドキドキするファンタジーはあんまりお目にかかれない。恋愛、友情、竜、魔法、戦いが交差していくロマンタジー。ヴァイオレットは20歳ではあるけれど、物語の語り口はもう少し年齢層が低めな気がする。あとがきに、アメリカのヤングアダルト小説とあるからやはりそうだった。
ストーリー性は抜群におもしろいのだけれども、、高校生や大学生とか多感な年ごろであればのめり込むようにハマったであろうと思う。これは映像化した方がより楽しめるんじゃないかと思う。当たり前のように死が隣り合わせだからゲームの中のようにも感じられる。
ファンタジーはそんなに得意なほうではなくたまにしか読まないけれど、この本は発売前から出版社の宣伝がものすごくて、それにアメリカで400万部突破と聞いたら読むしかないよなと。レーエンデは文庫になってからでいいかなと思っているが外国のファンタジーはそもそも厳選されているわけだし、、しかし期待値が高すぎたかも。というか自分が想像したものとは違って、あらぬ期待をした自分に反省。