書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

国内(さ行の作家)

『ムーン・パレス』ポール・オースター/何度も読み返したい本

『ムーン・パレス』ポール・オースター 柴田元幸/訳 ★★ 新潮文庫 2019.12.26読了 なんて心地良いんだろう。読んでいる時間が愛おしくなる。ポール・オースターの名前はもちろん知っていたが、実はまだ読んだことがなかった。もっと早く読めばよかった!こう…

『沈黙法廷』佐々木譲/裁判を傍聴してみたい

『沈黙法廷』佐々木譲 新潮文庫 2019.12.9読了 佐々木譲さんの『警官の血』が面白くて、一時期は佐々木さんの本をよく読んでいたのだが、数年ぶりである。ちなみに、『警官の血』は、ビートたけしさん主演でドラマ化されたが、それも結構面白かった。 今回の…

『月の満ち欠け』佐藤正午 / 月のように死んでも何回も生まれ変わる

『月の満ち欠け』佐藤正午 岩波文庫的 2019.10.19読了 目を疑った。これ、2〜3年前に直木賞を取った作品だよね?こんないかにも岩波文庫な表紙で驚いた。タイトルと著者名にマーカーを引いた、いわゆる岩波文庫の赤帯、青帯などの古典シリーズのようだ。まぁ…

『人類最年長』島田雅彦 / 近代日本の生き証人

『人類最年長』島田雅彦 文藝春秋 2019.10.8読了 まるで、日本の近代160年史を読んだような感覚だ。1861年にこの世に生を受けた宮川麟太郎が、時代と共に生き、159歳になって病院に運ばれたことをきっかけに、その時担当になった看護婦に人生を話すというス…

『小僧の神様・城の崎にて』 志賀直哉 / 生かされた彼がこれからどのように歩んでいくか

『小僧の神様・城の崎にて』 志賀直哉 新潮文庫 2019.7.10読了 ぼんやりとテレビを見ていたら、城崎温泉が映し出されていた。懐かしい。城崎温泉には2回訪れたことがある。浴衣を着て、地図を手に、いくつかの温泉を巡った記憶がある。そのテレビ番組では、…

『改訂完全版 占星術殺人事件』 島田荘司 / 改訂いりますか?そして探偵ものは再読には向かない

『改訂完全版 占星術殺人事件』 島田荘司 講談社文庫 2019.6.6読了 自分が好きそうな本を選んで欲しいと言われて、何冊か人に選んだ本の中の一冊である。どうやら、あまり気に入らなかったのか読む気配がない。たいてい人に本を勧める時は、その人がよく読ん…

『プラスチックの祈り』 白石一文 / 本当であるかを決めるのは自分

『プラスチックの祈り』 白石一文 朝日新聞出版 2019.4.6 読了 全盛期の白石さんの作品にはとうていお目に掛かれないだろう、とわかってはいるのに手にしてしまう。ストーリーも読み終えた時の感覚も予想ができるのに読んでしまうのは、自分自身が白石さんの…

『光のない海』 白石一文 / 作中の舞台を感じたい

『光のない海』 白石一文 集英社文庫 2019.2.6読了 白石さんは作中の舞台である地域を表現することがすこぶる上手だと思う。目に見える風景だけでなく、その地域ならではの料理であったり、そこに住む人達であったり。おそらく、小説を書く前に、自分でその…

『宝島』 真藤順丈 / 生命力に溢れた沖縄という島の物語

『宝島 HERO's ISLAND』 真藤順丈 講談社 2019.1.29読了 帯にもあるように、"熱量"と称されることが代名詞になっているかのような、第160回直木賞受賞作。最近の直木賞受賞作品は、個人的には好き嫌いがはっきりしており(近年では西加奈子さんの『サラバ!』…

「王妃の離婚」 佐藤 賢一

「王妃の離婚」 佐藤 賢一 集英社文庫 2019.1.6読了 第121回直木賞受賞作の本作、ずっと前から気になっていたがようやく読了。中世フランスの訴訟問題がテーマになっているとのことだが、私としては少し期待外れ。どうも、小中学生の時に読んでいたコバルト…