書に耽る猿たち

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『野良犬の値段』百田尚樹|時代を象徴したエンタメ作品

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『野良犬の値段』百田尚樹

幻冬舎 2021.3.5読了

 

う小説は書かない、って百田尚樹さん言ってたのになぁ。しかもそんなに月日は経っていないのに。お馴染みの幻冬舎から出版されているから、見城さんから勧められたのかしら。いずれにせよ読者からすると、まだ書き続けてくれるのは喜ばしいことだ。

るサイト上に「私たちはある人物を誘拐しました。これから実験をします」という不可思議な書き込みがあった。それをツイートした人がいて、反応する世間がいて、警察やマスコミが真相を探っていくストーリー。「百田さんがついにミステリを書いた」と書かれているが、私にはそうは思えない。

ステリではなく時代を象徴したエンタメ全開作品に仕上がっている。まるでテレビドラマになりそうな。そして、とびきり読みやすい。登場する人物の正体に気づいた時、柳美里さんの『JR上野駅公園口』や超有名人気作家の直木賞受賞作品が思い浮かぶ。

ィクションのため実在の人物・団体とは一切関係ないと謳っているが、だいたい予想がつく。あのテレビ局だ、あの出版社だ、あの事件だと。それを百田さんも狙っているのだろうけど。『カエルの楽園』の時も直球だったなぁ。ここまでくると潔い。

代を象徴した作品と言ったのは、TwitterをはじめとしたSNSが絡んでいるから。もはや現代小説の中にSNSが出てこないものはないのではないか。サイトを作る側も、見る側も、SNS依存・スマホ依存が度を越している。

自身も、つい先日LINEの不具合があり一日中スマホと格闘していた。生きるか死ぬかのような瀬戸際でも何でもないただのスマホのバグなんだからほっとけばいいのに、落ち着かない現代人ゆえの病。私もそんな病を抱えた1人なのだとつくづく嫌になってしまった。

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