書に耽る猿たち

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『アレグリアとは仕事はできない』津村記久子|機械との付き合い方

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アレグリアとは仕事はできない』津村記久子

ちくま文庫 2021.11.1読了

 

っきり同僚の女子社員のことだと思っていたら、このアレグリアって複合機だったのか…。地質調査会社で働く事務員のミノベは、高機能と謳われた複合機と格闘する。1分間機能を果たしては2分の休憩をする、すぐに壊れる、メンテ会社にも判断できないエラーをする…。コピー機に八つ当たりしても仕方がないのに。

かるなぁ。コピー機にもその機械なりの癖があって、詰まったら叩けば何とかなるみたいなところがあるからそれなりにうまく付き合っていくしかない。それでも機械にはたまにポンコツが存在するし、電化製品は運もある。スマホやパソコンなんて新品でも壊れたり調子が悪いことがある。「電化製品運が悪いね」と機械に詳しい人に言われたこともある。

ピー機の話だけで中編小説になっていることもまぁまぁすごいのだが、ミノベや先輩に共感したりしているうちに、クスリと笑いながら気が付くと読み終えてしまっていた。当たり前だけど、壊れた機械を修理する相手もまた人間なのであって、その担当者も色々悩みをかかえてるんだなと思ったり。こういったメンテを頼む時にも相手のことを気にかけないといけないなと反省した。

代はコピー機自体の使用回数が減り、ファックスはなくなりつつある。私の働く会社も10年前と比べて複合機は半分以下に減った。もしかしたらこの感覚がわかるのは限られた世代だけなのかもしれない。それでも多くの機会に対する思いやりと付き合い方は今後変わらないだろう。

題作の他に『地下鉄の叙事詩』という中編小説が収録されている。通勤ラッシュ時の満員電車で起きた事件が4人の視点で書かれている。津村さんの想像力は半端ない。いつもこうして電車の中で見かける人をあれこれと思い廻らしているのかなぁ。

初はのんびりと読んでいたが、視点が変わるにつれてモヤモヤと嫌な気分になっていった。痴漢の話なのだ。電車といえば、2日前に京王線で切り付け・放火の事件が起きた。私たちは安心して電車に乗ることもできないのか…。

やはや、結構立て続けに読んでいるが、津村記久子さんの文章はなんだか癖になる。まだ未読の作品があるから全て読もうと思っている。

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