書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

2021年に読んだ本の中からおすすめ10作品を紹介

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年2021年に私が読んだ本の中から、心に残った10作品を紹介しようと思う。単純にストーリーがおもしろかった本だけでなく、好きな本、感動した本、大切にしたい本など、私の個人的な嗜好で選んだものだ。本の読み方は人それぞれなので、数が多ければいいわけでは全くないけれど、参考までに分母がどれくらいかというと、去年読んだ本は170作品(紙の本の冊数としては199冊)である。

の手のランキングのようなものは数多に存在するけれど、実は私はあまり好きではない。大切な本は個人によって異なるだろうし、その人のいまの状況によっても感じ方は異なる。だから、自分なりに見付ければいいと思うし、自分で見つけられた時こそなんとも言いようのない幸せを感じる。

はいえ、せっかく本に特化したブログをやっているのなら、一度くらいやってみようかなと前々から考えていた。なかなか読む本を選べない人もいるだろうし、何かのきっかけになれば嬉しく思う。

年刊行された本ではなく、個人的に私が昨年読んだ本から選んでいる。そして、ランキング形式ではなく読み終えた順に並べている。

 

 

1作目

『一九八四年』ジョージ・オーウェル

本当は、郝 景芳(ハオ・ジンファン)著『1984年に生まれて』を読む前に一応読んでおこう、くらいのつもりで読んだのだった。2作とも読んだ直後は『1984年に~』のほうがおもしろく感じていたのに、時間がたつと不思議とこの『一九八四年』の記憶が壮大になり、ディストピア作品の名作と言われる所以がよくわかった。

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2作目

『雪沼とその周辺』堀江敏幸

堀江敏幸さんの本を初めて読み、その文体の魅力の虜になった作品。美しい日本語と、味わい深い表現に舌鼓をうった。とても読み心地の良い連作短編集である。堀江さんの作品をまだ読んだことがない人はこの本からどうぞ。

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3作目

春琴抄谷崎潤一郎

谷崎文学の最高峰と言えると思う。まだすべての作品を読んだわけではないけれど...。春琴を思う佐助の気持ちを考えると、苦しいのにこれが究極の愛だと思い胸がぎゅうっとなる。ねっとりとした文体も良い。何度も読み返したい名作である。

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4作目

『クララとお日さま』カズオ・イシグロ

もしランキング形式で発表していたら、1位か2位に選んだであろう作品である。現代において読まれるべき作品。人工ロボットの視点で語られる、ちょっと切ない、でも感動すること間違いなし。

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5作目

『ミドルマーチ』ジョージ・エリオット

長いのにそんなことを感じさせず、ただひたすらに読むという行為がそれだけで幸せだった。トルストイ著『戦争と平和』のイギリス版といったところ。順位をつけるとしたら、これと『クララとお日さま』で1位2位を迷うところだ。

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6作目

『木曜殺人クラブ』リチャード・オスマン

純粋におもしろく、ミステリ・探偵モノの醍醐味を味わえる一級品である。クリスティのミス・マープルシリーズが好きで、現代風にアレンジしたものを味わいたい人には是非おすすめ。これが著者のデビュー作ということだが、今後の期待感が半端ない。

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7作目

『長い一日』滝口悠生

この癖になる感じは何だろう。滝口悠生さんの日々の生活をのぞいたような、いやいや本人が自ら細かく語っているのだから、のぞいたわけではないのだけれど。思ったことを全て文章にしているようだからそう感じてしまうのか。読んでいて「うんうん」と何度も頷いてしまい、1人でクスッと笑ってしまうような一冊。

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8作目

『夜が明ける』西加奈子

西加奈子さんの代表作『サラバ!』に次ぐ名作。何よりも導入が素晴らしく引きこまれる。ストーリーの持っていき方がめちゃめちゃに上手い。いわゆるネグレストの話で、読んでいて結構辛くなるのだけど、一筋の光が未来を照らす。

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9作目

『やさしい猫』中島京子

日本における入国管理制度について、今まで全く理解していなかった。こんなことが行われていて、こんな風に家族や関係者が引き離されているなんて。目を背けていたわけではない、日本人が理解すらしていなかった諸々の事情や実態について、非常に考えさせられる。最後はきちんとハッピーになり読み終えた後はあったかい気持ちになる。本当に優れた良い小説だと思う。誰にでも読みやすいので是非。

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10作目

『パワー・オブ・ザ・ドッグ』トーマス・サヴェージ

こんな作品をかつて読んだことがないほど衝撃的だった。ホラー作品ではないのに、ひたすらに恐ろしい。誰が本当の姿で誰が狂気なのかわからなくなる。Netflixの映像化作品の方はまだ観てないけど、この小説世界をどんな風に表現しているのか、興味深い。

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【番外編】

個人的に、今後がとても楽しみな作家は石澤麻依さん。好みは分かれると思うけれど、芥川賞を受賞した『貝に続く場所にて』は秀作だった。また、乗代雄介さんの作品も良かった。3度目の正直で『皆のあらばしり』はついに芥川賞を受賞できるかしら。安定のクリスティーさん、モームさん、津村記久子さん、窪美澄さん。ついに読んだ宮本輝さんの大作『流転の海』リョサさん『悪い娘の悪戯』平野啓一郎さんの『本心』貫井徳郎さんの『邯鄲の島遙かなり』、これらも10作に入れようか迷うほど良い作品だった。

 

し、おすすめした10作品を読んで私と同じく気に入ったという人がいたら、是非一緒に語らいたいものだ。おそらく、話もぴたりと合うだろうなぁ。でも、嗜好の異なる人たちと語らうのもまたまた楽しいもの。エッセイやノンフィクションも読んだのに、結局全部小説になってしまい、私はやっぱり無類の小説好きなんだなぁと改めて実感した。

こに紹介していなくても、素晴らしい本はたくさんあった。あと数か月して振り返った時には、どうしてこの本を入れなかったのかと悔やむかもしれない。それだけ、自分にとっての読み時が大きく左右するのだ。

んにせよ、2022年も皆さまにとって素敵な本の出会いがたくさんありますように。世に、書に耽る猿たちが増えますように。