書に耽る猿たち

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『ババヤガの夜』王谷晶|世界に誇れる日本文学

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『ババヤガの夜』王谷晶

河出書房新社河出文庫] 2025.08.04読了

 

国の伝統あるダガー賞を受賞し、そのスピーチでの王谷さんはクールでかなりイカしてた。海外ではそんなに目立たないかもしれないが日本にいたらひときわ目立つ個性的な姿。ともかく彼女はカッコよかった。容姿も話すことも。どんな小説を書いているのだろうと気になった。

 

ガー賞を受賞したことが読むきっかけとなったわけだが、そもそも普段バイオレンス小説(特に女性が主人公の)は好んで読まないから、この機会に手に取ることができて良かった。ダガー賞と聞いてまっさきに思い浮かぶのは『ストーンサークルの殺人』である。ダガー賞というと本格ミステリーのイメージがあったから、この作品が選ばれたことが意外だった。そういう意味では同じくノミネートされていた柚木麻子著『butter』も意外かも。『butter』は刊行後すぐ読んだけどかなりおもしろかったな。

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ンカの腕を見染められた新道依子(しんどうよりこ)は、関東きっての大規模ヤクザ内樹會(ないきかい)会長の一人娘・尚子(しょうこ)の護衛を任されることになる。初めこそ暴力的な描写が続いて顔をしかめたくなったが、途中からは人間味あふれる依子と、背伸びをしている尚子とのやり取りにあたたかい気持ちになる。

 

柄な身体に生まれ、類い稀なる力を持ち、その力を奮うことが大好きな依子はこの世をどう生きれば良いのか悩んでいた。自らの進むべき道をもがきながら歩む。2人の関係性はどうなるのか。喧嘩と狂気がうごめいてるのにどこか繊細さがあり、それは王谷さん自身の心が美しいからだろうと感じた。あとがきによると、王谷さんはフィクションで暴力的なシーンを書くのは楽しく気持ちいいと言う。現実世界では起こせないことを文章で解消するのだろう。

 

谷さんの本は興味があったのでこの機会に手にすることができて良かった。私が気になっていた作品のタイトルが見つからないなと思っていたら、実は気になっていたのは古谷田奈月さんだったことが判明。なんてこった!でも知らない作家の本を読むのは楽しいからな。古谷田さんの作品も近いうちに。

 

の作品だけでなく、今海外では日本の小説が売れに売れているそう。以前は三島由紀夫さんや川端康成さんなど、名だたる文豪の本しか読まれていなかった。村上春樹さんの本は書店に並んでるのだろうと思っていたが、今はかなり多くの作品が訳されておりかつ売れているそうだ。これは純粋に嬉しいこと。日本文学は世界に誇れるんだ。