書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

『シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々』ジェレミー・マーサー/本に囲まれて暮らす

『シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々』ジェレミー・マーサー 市川恵理/訳 河出文庫 2020.7.29読了 フランス・パリにある「シェイクスピア&カンパニー書店」は本好きな人の聖地である。名だたる作家たちが集い、生活してきた場所だ。とは言っても私…

『さくら』西加奈子/愛とアイデンティティ

『さくら』西加奈子 ★ 小学館文庫 2020.7.27読了 西加奈子さんの小説の中では、おそらく刊行数の多さは5本の指に入ると思う。西さんと言えば直木賞受賞作『サラバ!』が圧倒的すぎて、他の作品が霞むように見えてしまう。そんなことないのに。でも、この『さ…

『ブルックリン・フォリーズ』ポール・オースター/希望を失わずに生きる

『ブルックリン・フォリーズ』ポール・オースター 柴田元幸/訳 ★ 新潮文庫 2020.7.25読了 文庫になるのを楽しみにしていたのだけれど、表紙を見て単行本と印象が違い少し戸惑ってしまった。単行本のジャケットは線画で描かれていて、、何というかもっとお洒…

『不道徳教育講座』三島由紀夫/叡智を感じるエッセイ

『不道徳教育講座』三島由紀夫 角川文庫 2020.7.22読了 いやはや、三島さんは何を書いても一級品だ。有名すぎるこのエッセイ、実はまだ未読だったのだが、今年のカドフェスで店頭に並べてあったのを手に取り購入した。これが、なんともウィットに富んでいて…

『ゴールドフィンチ』ドナ・タート/未来の神秘・名画と共に

『ゴールドフィンチ』1〜4 ドナ・タート 岡真知子/訳 ★ 河出書房新社 2020.7.20読了 村上春樹さんが『村上さんのところ』でドナ・タートさんの作品を絶賛していた。手始めに文庫本で手に入る『黙約』を去年読んだら、やばい!ほど面白く、去年読んだ小説…

ブックカバー

今日は本の感想ではなく、ちょっとひと息。皆さんは、本を読むとき、持ち運ぶときにはどんなブックカバー(書皮:しょひ)をつけているだろうか? 私は書店で被せてもらう紙のカバーが一番好きで落ちつく。そもそも書籍は電子ではなく紙が好き派(決して電子…

『新聞記者』望月衣塑子/昨年の日本アカデミー賞原作

『新聞記者』望月衣塑子 角川新書 2020.7.11読了 昨年の日本アカデミー賞『新聞記者』の原作である。正直、私の中では絢爛豪華な海外のアカデミー賞、ヴェネツィア国際映画祭、カンヌ国際映画祭等の授賞式に比べて、それを真似た日本アカデミー賞授賞式が滑…

『ファントム・ピークス』北林一光/10年以上前の作品を書店に並べる

『ファントム・ピークス』北林一光 角川文庫 2020.7.9読了 北林一光(いっこう)さんは、その才能を惜しまれつつ45歳という若さで癌のため亡くなられた。映画プロデューサーを経て執筆活動に入った方で、本作は松本清張賞の最終選考まで残り、非常に評価され…

『知と愛』ヘルマン・ヘッセ/相反するものは表裏一体

『知と愛』ヘルマン・ヘッセ 高橋健二/訳 新潮文庫 2020.7.7読了 今年の4月以降、ヘッセ作品を読みあさっている。一貫して言えるのが、人間が生きることの意味を説いていること。特に本作品は信仰・哲学的な面がなお一層強く現れている。 原題は『ナルチス…

『やめるときも、すこやかなるときも』窪美澄/過去も未来も受け入れる

『やめるときも、すこやかなるときも』窪美澄 集英社文庫 2020.7.4読了 書店ではよく目にするが、窪美澄さんの小説を読むのは実は初めてだ。なんとなく学生さんや若い人がターゲットかなと。そして本作はジャニーズの誰か(キスマイの藤ヶ谷くんだったかな?…

『雪』オルハン・パムク/幸せとは何かを問う政治小説

『雪』オルハン・パムク 宮下遼/訳 ハヤカワepi文庫 2020.6.30読了 3〜4年前に買ったが、何となく読む気分にならずにずっと眠っていた本である。オルハン・パムクさんは大好きな作家の1人だ。トルコの小説で読んでいるのは彼の作品だけだと思う。 主人公Ka…