書に耽る猿たち

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『デイジー・ミラー』ヘンリー・ジェイムズ|恋愛に対するアメリカ的な価値観

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『デイジー・ミラー』ヘンリー・ジェイムズ 小川高義/訳

新潮文庫 2021.4.10読了

 

ンリー・ジェイムズ氏の『デイジー・ミラー』が新潮文庫から新訳で刊行された。初めて『ねじの回転』を読んだときに、ジェイムズさんの紡ぐ物語世界に引き込まれた。ホラー要素もあったためぞくぞくした気持ちになったし、子どもがあんなにも怖いと感じたのはあの時からだ。

イスの街ヴォヴォーにあるホテルに滞在する叔母を訪ねた英国人青年ウィンターボーンは、美貌のデイジー・ミラーと知り合う。デイジーは自由奔放なアメリカ人女性である。彼女に翻弄されながらも惹かれていくウィンターボーン。若い2人の心の動きを想像しながら読み進めた。

ギリス的な考えとアメリカ的な考えが対比されているようだ。現代とは異なるだろうが、当時のヨーロッパはどちらかと言えば内向的、アメリカは自由で開放的だった。2人の恋愛に対する価値観からも明らかだ。

トーリーとしては至って普通なのだが、デイジーの謎めいた存在に読者も惹かれてしまう。ネタバレ的要素が文庫本の帯に書かれている(いただけないな〜)が、本書はミステリーでもないのでまぁよしとしよう。

の中編小説はジェイムズ氏の初期の作品のようであるが、かなり読みやすい。ジェイムズ氏は女性を主人公にしたり中心人物にすることが多い。こうあるべきという理想や憧れのようなものを女性に見いだしていたのだろうか。    

は『ねじの回転』や『ワシントン・スクエア』のほうが好みである。それよりも、大作である『大使たち』と『ある婦人の肖像』がずっと気になっている。いつかは読もうと思っているが、今がその時なのかも。