『動物会議』エーリヒ・ケストナー ヴァルター・トリアー/絵 池田香代子/訳
岩波書店 2022.3.10読了
ドイツで1949年に出版された絵本で、日本でもロングセラーとして読まれている。ケストナーさんといえば『飛ぶ教室』『ふたりのロッテ』が有名であるが、この絵本のことは知らなかった。本の内容も素晴らしいが何よりトリアーさんの絵が素敵すぎる。
これ、人間が行う戦争を批判したもので、動物たちが子どもたちのために戦争をやめさせようと会議を開く話なのだ。ユーモア溢れる語り口だけど実はかなり核心をついた作品。何より現在のロシアとウクライナの戦いをリアルタイムで見ているから、本当に身につまされる思いになる。
象やキリン、ライオンの親が子どもたちから「何か読んで」とせがまれて近くにある新聞を読み聞かせる場面。戦争のことなんて子どもに聞かせる話ではないと気付く。私には子どもがいないけど、小さな子を持つ世の中の親たちは、自分の子供に今の世界情勢をどうやって話しているのだろう。
戦争、難民、飢饉、ストライキ、紛争、亡命などは絶えることがない。大人たち人間の行動は結果として苦しみもだえる人たちを生み出してしまう。未来を担う子供たちのこと、そして人間以外の動物や昆虫、生きとし生きる者たちに悪影響を及ぼす。この絵本を子供たちと読み話し合うことで考えるきっかけになると思う。
多くの動物たちが動物ビル(記事の最後に、模倣したビルの写真あり)の大会議場に集まるのだが、ミッキーマウスや象のババール、長靴を履いたネコも絵本の中から飛び出してやってきたというのが笑えた。ちゃんとトリアーさんの絵にも描かれている!
実はこの絵本を購入したのは、先日、東京・立川で開催されていた「どうぶつかいぎ展」を観に行ったから。元々動物が好きで、さらにかわいいイラストや絵も好きなので気軽に行ってみたところ、トリアーさんの絵にめちゃくちゃ心を奪われてしまったのだ。ポストカードを数枚選んでいるうちに、全部載っているこの大型絵本を手に入れてしまった。
ヨシタケシンスケさんを始めとした数人の気鋭アーティストの作品も良かったのだが、トリアーさんの絵には敵わなかった。著者のケストナーさんとトリアーさんはずっと二人三脚で子どもの本を作っていたそう。普段は字で埋め尽くされた本をひたすら読んでいるけど、絵本もとても大事だよなぁと思う。