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『エリザベス女王の事件簿 バッキンガム宮殿の三匹の犬』S・J・ベネット|王室事情を丹念に読み込む

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エリザベス女王の事件簿 バッキンガム宮殿の三匹の犬』S・J・ベネット 芦沢恵/訳 ★

KADOKAWA[角川文庫] 2023.4.23読了

 

ギリス好きとしては、英国王室ものは外せない。しかもミステリーなんて。去年このシリーズの第一弾を読んでとてもおもしろかったから迷わず飛びついたが、この第二弾も期待通り楽しめた。前作の舞台はウィンザー城だったけれど、今回はあの煌びやかなバッキンガム宮殿だ。誰でも名前は知っているロンドンにある王室宮殿。

 

殿の屋内プールで、王室家政婦であるミセス・ハリスが謎の死を遂げた。事故死なのか、殺人なのか。やがて脅迫の手紙やら女王のコレクションの絵画が行方不明になった話にも繋がり、めくるめく展開に頁を捲る手が止まらなくなる。

 

件を解決する過程ももちろんおもしろいのだけれど、このシリーズの醍醐味はやはり英国王室のあれやこれやが興味深く書かれていることだ。王室の職員というのは特別であり、こんなにも多くの人が王室のため、国のために動いているんだ。一方で日本の皇室についてはこんな風に小説の題材になることは絶対ないんだろうけれど、天皇皇后とどういうやり取りをしているのかが気になる。小説以外なら読み物はたくさん出ていそう。

 

秀な秘書官のサー・サイモンは、女王が言う「〜してもらえると、とてもありがたいのだけれど」は「つべこべ言わず、どうにかしなさい」と同じだと解釈している。秘書官になってすぐに学んだことだというが、へりくだった物言いでお願いするこの女王のセリフは「さすが、上手いな」と思った。私が誰かに命令するなんてことはないけれど、何かお願いをするときにこの言い方を使ってみようかしら。

 

90歳のおばあちゃんがこんなにも頭脳明晰で行動力もあって、、ちょっと信じられないけれど、実際のエリザベス女王を想像すると有り得るかもって思ってしまう。これまた前作同様、女王とツートップでもう一人の主役は秘書官補のロージーだ。ロージーの魅力はもう1作目から飛びぬけていたけど、読めば読むほど、サー・サイモンが味があって好きになるんだよなぁ。

 

ンポもよくて読みやすいのにわりあいに時間がかかってしまうのは、内容が込み入ってるからなのか。いや、謎解き要素だけでなく、ふだん見聞きしない王室事情を丹念に読んで理解するのに時間がかかるのだ。適当に読み飛ばしたくないというか。にしても、この文庫本、税抜1,700円って高すぎないか…。新潮文庫、角川文庫、幻冬舎文庫は比較的お手頃だと思っていたのに。まぁ、4日間かけて楽しめたのだからまぁ良しとするか。

 

のシリーズ第一弾を読んだあとに、エリザベス女王のノンフィクション本を一冊読んだのだけれど、読む前は大好きだっま女王のことを、そうは言えない要素があってちと辛くなっていた。誰だって良いところばかりではないと理解はしているのに。でも、フィクションとはいえこの小説を読んで、チャーミングで頭のいい女王をまた大好きになった。なんだか自分の中でホッとした。

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