書に耽る猿たち

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『白い薔薇の淵まで』中山可穂|究極の愛を突き詰める

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『白い薔薇の淵まで』中山可穂

河出書房[河出文庫] 2022.11.7読了

 

前から気になっていた中山可穂さんの作品。李琴峰さんの小説の中にも登場しており、おそらく台湾をはじめとして海外でも広く読まれているのだろう。同性愛者の恋愛を描いた作品群でよく知られている。

んな作品なのかも知っていたし予想もしていたはずなのに、読み初めてすぐ、濃密な描写に恥ずかしくなってしまった。しかし、その淫らな描写と作品の2人の主人公とく子と塁(るい)の奔放で真っ直ぐな想いから目を背けることができず、ものの2時間たらずで読み終えてしまったのだ。

性同士であれ同性同士であれ、色々な愛の形があると思う。だけど、異性よりも同性への愛の方が深く崇高に思うのは私だけであろうか。狂おしいほどの熱量が溢れている。男とか女とかそういうことは関係なく、身体が欲する極み。こんな風に突き詰めたなら本望だと思う。この作品は山本周五郎賞という名誉ある文学賞を受賞された。この内容はなかなか映像では表現できない。文学の力でしかその深く美しい愛は届けられないのだと思う。

ルハン・パムク著『無垢の博物館』を読んでも感じだが、究極の愛は永遠には続かずいつしか悲劇に転じる。死んでもいいほどの愛は、不安と隣り合わせ。ということは、安定したほどほどの幸せは、きっと究極の愛ではないんだろうなと思う。一体どちらが良いのだろう?

山さんの作品は、もう一冊『感情教育』という小説が気になっている。去年6月に書かれた河出文庫版あとがきによると、作家生活の後半戦は様々なテーマで執筆されたそうで、他のジャンルの作品も読んでみたい。

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