書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

外国(ア行の作家)

『モスクワの伯爵』エイモア・トールズ/心のゆとりと人間らしい暮らし

『モスクワの伯爵』エイモア・トールズ 宇佐川晶子/訳 早川書房 2020.4.17読了 新聞の書評欄でこの本を見つけて、気になって買っておいた。もう、装丁からして素敵すぎる。こんな鮮やかなエメラルドグリーンの表紙に金色ってなかなかない。そして写真ではわ…

『雲』エリック・マコーマック/全ては神秘に包まれている

『雲』エリック・マコーマック 柴田元幸/訳 ★★ 東京創元社 2020.3.8読了 ひときわ目を惹く素敵な装幀である。いつも本には書店の紙のカバーをかけてもらい持ち歩いているのだけれど、素敵な表紙がカバーの中に包まれていると思うだけでもなんだかウキウキす…

『若草物語』オールコット/子供の頃に夢中になった物語を読み直す

『若草物語』オールコット 松本恵子/訳 新潮文庫 2020.3.2読了 子供の頃に夢中になった物語をまた読み返してみたいと思うことはないだろうか?まさしく私にとって今ちょうどそんな時で、書店に平積みされていた本書が目に留まった。今月末から映画化される…

『女王陛下のユリシーズ号』アリステア・マクリーン/自然界の猛威に立ち向かう男たち

『女王陛下のユリシーズ号』アリステア・マクリーン 村上博基/訳 ハヤカワ文庫 2020.2.9読了 海洋冒険小説として世界一有名な小説は、メルヴィルの『白鯨』だろう。読んだのは4〜5年前だろうか。世界の十大小説の一つだし読んでおくかという単純な動機だっ…

『昼の家、夜の家』オルガ・トカルチュク/豊かな観察眼で物事を見つめる

『昼の家、夜の家』オルガ・トカルチュク 小椋彩/訳 ★ 白水社EXLIBRIS 2020.2.7読了 去年はノーベル文学賞が2作品発表された。2018年度と2019年度分で、オルガ・トカルチュクさんは2018年度として受賞。2019年度受賞のペーター・ハントケさんの本はあまり惹…

『堆塵館』エドワード・ケアリー/ケアリーの世界へようこそ

『堆塵館(たいじんかん) アイアマンガー三部作1』エドワード・ケアリー 古屋美登里/訳 東京創元社 2020.1.13読了 確かに書店に並んでいた時からこの表紙は印象深かった。でも、幻想文学かな、子供向けなのかな、となかなか読むまでに至らなかったのだ。…

『赤い髪の女』オルハン・パムク/父と子の物語、見つめる母

『赤い髪の女』オルハン・パムク 宮下遼/訳 早川書房 2020.1.9読了 ★ 私の敬愛するオルハン・パムク氏の新作だ。思えば、トルコに興味を持つようになったのも、彼の『僕の違和感』という作品を読んでからだった。街に響き渡るボザ売りの声を生で聴きたいと…

『ドリアン・グレイの肖像』オスカー・ワイルド / 外見の醜さよりも、内面の醜さの方が恐ろしい

『ドリアン・グレイの肖像』オスカー・ワイルド 富士川義之/訳 岩波文庫 2019.10.28読了 著者も作品名も勿論知っていたが、実はオスカー・ワイルドの作品を読むのは初めてである。いや、童話『幸福な王子』はもしかしたら子供の頃に読んだかもしれない。『…

『嵐が丘』 エミリー・ブロンテ / ヒースクリフ、彼の名は忘れられない

『嵐が丘』上下 エミリー・ブロンテ 河島弘美 / 訳 岩波文庫 2019.9.24読了 サマセット・モームが「世界の十大小説」として挙げた中の1冊が、この『嵐が丘』である。ブロンテ姉妹の1人、エミリー・ブロンテが唯一残した小説、私が読むのは確か3回めだと思う…

『パピヨン』 アンリ・シャリエール / 自由を求めて

『パピヨン』 上・下 アンリ・シャリエール 平井啓之 / 訳 河出文庫 2019.6.16 読了 私の中で脱獄ものと言えば、吉村昭さんの『脱獄』、ヴィクトル・ユゴーの『レ・ミゼラブル』、そして金字塔、アレクサンドル・デュマの『モンテ・クリスト博』である。ど…

『カササギ殺人事件』 アンソニー・ホロヴィッツ / 英国古典ミステリーを愛する

『カササギ殺人事件』上・下 アンソニー・ホロヴィッツ 山田 蘭/訳 創元推理文庫 2019.5.19読了 年末の海外ミステリランキングを総ナメにした本作品、書店でもうず高く積み上げられていた。アガサ・クリスティへのオマージュと謳われておりなんとなく予想は…

『贖罪』 イアン・マキューアン / だれに、なにを償うのか

『贖罪』 イアン・マキューアン 小山太一/訳 ★ 新潮文庫 2019.2.3読了 しばらく気になっていたこの小説、じっくりと堪能できた。「贖罪」とは、自分の犯した罪や過失を償うこと、罪滅ぼし。この小説では、色々な意味での「贖罪」があった。これから読む人の…