書に耽る猿たち

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『カソウスキの行方』津村記久子|相手の良いところを見つけよう

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『カソウスキの行方』津村記久子

講談社講談社文庫] 2023.4.3読了

 

村記久子さんお得意のお仕事小説かなと思っていたら、確かに職場の話ではあるけれど、アラサー女性の今後の生き方みたいなものが等身大の目線で書かれたものだ。雰囲気としては、芥川賞受賞作の『ポトスライムの舟』に近いかな。

 

年前に友人のしおりとお互いの大失恋を慰め合ったイリエだったが、今ではしおりは新たな恋愛を成就させ結婚することになる。もちろんイリエは喜ぶのだが、自分が誰かを好きになれない状態、後輩のためを思ってしたことが仇となり左遷させられたこと、何にも打ち込めない境遇にただダラダラと過ごす日々を愁いる。

 

んな生きる活力が起きない中、何かに挑戦してみようとふと思い立ち「カソウスキ」を始めることに。カソウスキ?ん?カワウソ?と不思議なタイトルだなと思っていたのだが、これは「仮想好き」だと知る。誰かを好きだと仮想してみること。イリエは左遷先の潰れそうな倉庫で働く同僚の森川を好きなんだと仮想する。その先はどうなっていくのか、なんていうまぁどうでもいいといったらどうでもいいような話。

 

れって実はすごく良いことなんじゃないかと思う。大抵の人は他人の悪いところに目がいってしまう。よく「相手の良いところを見つけよう」なんていうけど「カソウスキ」はこれに近い。長所を見つけるうちに、その人のことを理解できるようになり、いつの間にか最初に思っていたほど嫌じゃなくなる。

 

に短編が2作収められており、特に最後の『花婿のハムラビ法典』はめちゃシュールだけど優しい小説だった。「目には目を」を彼女にしてしまうんだけど、それがなんともかわいくて、和んで、結局2人は結婚するんだよなぁ。ほのぼのとした2人の関係性がなんともいじらしい。

 

村さんの作品はかなり読んでいるが、やはりデビュー作の『君は永遠にそいつらより若い』(当時は『マンイーター』というタイトル)がダントツだと思う。他の作品の良し悪しはそれぞれだが、それでも読み漁ってしまうのは、読んでいて落ち着くというかホッとするのだ。

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