書に耽る猿たち

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『また、桜の国で』須賀しのぶ/激動の時代を生き抜いたポーランド

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『また、桜の国で』須賀しのぶ

祥伝社文庫  2020.1.5読了

 

前もよく見かけるし、少し前から気になっていた作家の1人だったが、ライトノベルで有名な人だし、と億劫になっていた。しかしここ数年は一般文芸書を執筆しているようで、数年前の直木賞候補になった本作が文庫になったので読むことにした。

ーランドと言えば、たいてい思い浮かべるのはショパンだろうか。私にとってはキュリー夫人だ。小学生の頃、世界の伝記シリーズか何かを読んでいて、その中にキュリー夫人について書かれていた本があったのだ。女性で初めてノーベル化学賞を受賞した人。

の小説の舞台は、約100年前の1930年代だ。外務書記生棚原慎(タナハラマコト)がワルシャワにあるポーランド大使館に派遣されてからの、欧州が目まぐるしく動く激動の時代を生きた彼と、その仲間らを巡る物語だ。日本は建国後、ずっと国としては存在している。しかし、ポーランドは地図から2回も姿を消している。これは、私たちにとっては考えられないことだ。ポーランドの人々はどのようにして生きてきたのか、祖国を想う気持ちはどんなものだったろうと考えさせられた。

実を元にしたフィクションではあるが、今まで気に留めることのなかったポーランドという国に興味を持った。国民は、決して諦めずに、自国を信頼して戦い続けたのだ。ナチスポーランドを侵略して始まった第二次世界大戦。日本はドイツと同盟を結んでいたため、どうしてもドイツ寄りにあったが、このポーランド側からみた彼らを想うと心が痛む。登場人物達が様々な国籍を持ってしてもお互いを友として信頼するならば、本来国同士の諍いはあってはならない。国籍を超えて人間同士は分かり合えるのだから。

待をせずに読んだが、作者の歴史に精通した文章と飽きさせないストーリーに、思いの外夢中になれた。そして、美しく気高い精神を持つポーランドという国を訪れてみたいと思った。自分にとって新たな世界をみせてくれる本はやはり素晴らしい。

イトノベルは心にずどんと来ないし、名前の通り軽くあっさり読めてしまうため、個人的にあまり好きではないのだが、かく言う私も小中学生の頃は講談社コバルト文庫集英社X文庫を読み漁った。日向章一郎さんや氷室冴子さん大好きだったな。あとは恋愛もので折原みとさん。ほとんどの女性がジャニーズに一度はハマるように、読書好きにもラノベは通り過ぎる道なのかもしれない。本を読むきっかけになる人も多いはずだ。

食わず嫌いならぬ❝読まず嫌い❞はやめて、読んだことない作家の作品も積極的に読んでいこう。