書に耽る猿たち

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『あのころなにしてた?』綿矢りさ|普通の人と同じようにコロナ禍を過ごすが作家独特の感性がある

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『あのころなにしてた?』綿矢りさ

新潮社[新潮文庫] 2024.10.14読了

 

イトルにある「あのころ」というのは新型コロナウイルスの感染が猛威をふるい始めた2020年のこと。4年前、私自身はどうしていたかなぁ。2月に個人的なことで初めての手術と入院があって、その後療養のために少し会社を休んでいた記憶が大きく、そのあと徐々に日本というか世界の形相がコロナによって変わってしまったという印象がある。あれからもう4年も経つのか…。会社がリモートワークを取り入れたりと仕事のやり方が色々と変わり、そもそもの仕事の在り方を考えていたあのころ。

 

家独特の感性というか、普通の人が気にならない(というか気づかない)ことに颯爽と目を向ける。「もし今回のコロナウイルスが擬人化されるとすれば、魂を抜く系の魔のもの」だというくだりにはさすが作家さんだなと唸らされた。人を表へ誘い出す吸引力がないといけないので、いかにも健康そうな、薄着で白い歯のとても明るい笑顔をした子が、「遊ぼう!」と誘ってくるような新種の魔物だって。

 

た、今書いている小説は作中にコロナが出てこない設定だがそれを変えた方が良いのか迷ったり、コロナとは異なる話を書いていると現実逃避ができて楽しいけど書き終わったあと日常に戻るときに時差のようなものを感じて疲れたり。こういう感覚は物書きでないとわからないものだろう。でも多くの人と同じように、一人の人間としてコロナのせいで生活様式に変化があったのだ。

 

綿矢さんのエッセイを読むのは初めてだ。エッセイの既刊本があるかは知らないけど、これは「絵」日記エッセイだという。表紙のイラストは別の装画家(北澤平祐さん)のものだが、中には綿矢さんが描いたイラストと写真がいくつか収められている。f:id:honzaru:20241014155337j:image
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なかなか味があって良い感じ。益田ミリさんみたいに旅行記やら生活記のような本も出せそう。加藤千恵さんが解説で書いているように、小説で感じる「鋭さ」がなくてエッセイには「やわらかさ」が溢れている。小説家という職業は特殊だろうけれど、それ以外のところではごくごく普通に生活をしていて、私たちとおんなじなんだなと何故か安心した。

 

が一番好きな綿矢さんの小説『オーラの発表会』は、2021年8月に単行本が刊行されているから、この日記を書いた後に執筆されている。色んな要素があってひとつの作品は生まれると思うが、コロナ禍を過ごしたこの環境あって出来た小説なのだと思うとなかなか感慨深いものがある。

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