書に耽る猿たち

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『スモールワールズ』一穂ミチ|『世にも奇妙な物語』のようなドラマにぴったり

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『スモールワールズ』一穂ミチ

講談社講談社文庫] 2023.11.24読了

 

穂ミチさんの作品は直木賞候補や本屋大賞候補にもなったから、気になっていた作家さんの1人だ。単行本と同じジャケットで、初版限定で特製しおりが挿入されていた(写真で本の上にあるもの)。最近、こういう半透明なしおりが好き。薄ければ薄いほど良い。

 

気ない日常の中に潜む闇や残酷さが浮かび上がる。ディズニーランドの「イッツアスモールワールド」みたいなタイトルだから、あんな世界観なのかなと想像していたのだけど、良い意味で期待を裏切られる。「え!そうなっちゃうの」という展開に持っていかれる話が多く、ぞわっとする。

 

の本には6つの短編と、文庫書き下ろし掌編の合わせて7作が収められている。なかでも気に入ったのは次の2作である。『魔王の帰還で図体がでかい姉の真央が実家に帰ってきたのは、自分の離婚だけが理由じゃなくて、弟のためを思ってそばにいたかったんだろうなぁ。『花うた』では、こんな関係性になるなんて絶対にあり得ないと最初は思っていたけれど、長い年月をかけた2人のやり取りを読んでいると、すうっと心に沁み入るものがあった。人は、変われるのかもしれない。

 

に一作目のネオンテトラを読んだ時、展開が少女マンガのようだと思った。というより、漫画にしたらもっと良くなるんじゃないかなって。それか『世にも奇妙な物語』のような短めのドラマにしたらすごくおもしろく出来るんじゃないかな。

 

れだけ雰囲気が異なる世界を書けるのが単純にすごいと思った。特に手記や告白体が合っているんじゃないか。迫真に満ちている感じがリアルで圧倒される。人間が持つ危うさ、儚さ、ままならなさを独自の視点からあぶり出す一穂さんの筆致は、辻村深月さんや今村夏子さんの書くものに近い気がする。一穂さんの長編小説も読んでみたくなった。