書に耽る猿たち

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『ガラスの街』ポール・オースター/ニューヨークをあてどもなく歩く

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『ガラスの街』ポール・オースター  柴田元幸/訳

新潮文庫  2020.5.3読了

 

ースターさんのニューヨーク3部作のうち第1作目がこの『ガラスの街』である。主人公クインの家に、深夜に電話がかかってくる。「ポール・オースターさんですね?」クインはポールになりきり、私立探偵としてニューヨークの街を駆け巡る。

つものように軽快でリズミカルな文章が物語世界へと誘う。何故だかオースターさんの作品を読んでいると、身体も軽くなり宙を飛べそうな感覚になる。クインの過去も気になるし、追いかけるスティルマンという老紳士も謎だし、そもそも何故ポールに?と。予想ができないストーリーに翻弄されながらクインと共に街を歩く。

ティルマンが突然いなくなった時、クインはポールを訪ねていく。そこで出逢う彼と家族はまさに著者オースターさんの本物の家庭だ。家を出た後、ニューヨークの街をあてどもなく彷徨うクインの姿が印象深い。どこの角を曲がっただの、立ち止まったり通り抜けたり、これでもかとばかりに詳細に描かれる行動。ただクインの動きを一コマづつ表現しているのだが、何故だか滑稽にも感じる。ニューヨークというガラスの街で迷子になるかのようなクイン。自分が何をしているのか、何処に向かっているのかわからなくなる、そんな街なのかもしれない。

ーソドックスな探偵小説でもなく、かといってミステリでもない。どんなカテゴリにも当てはまらない不思議な作品だったため、当時は刊行してくれる出版社がなかなか見つからなかったとは驚きだ。現代アメリカ作家で確固たる地位を築くオースターさんの作品は、どれも読者を楽しませてくれる。

はニューヨークに2回訪れたことがあり、意外と身近に感じている。海外で複数回行ったのはタイとニューヨークだけ。NY1度目は大学卒業間際に行った家族旅行。2度目は入社5〜6年めに行った研修旅行。ニューヨークといえば私達がテレビでよく観るのは、タイムズスクエアや高層ビル群だ。他にも多くのエリアがありその街・路地ごとに様々な顔があり興味深く面白い。次に行ったらセントラルパークで1日中のんびり本を読んで過ごしたいなぁ。 

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