2019-01-01から1年間の記事一覧
『めくらやなぎと眠る女』 村上春樹 新潮社 2019.5.25読了 まさに、ジャケ買いである。短編集は滅多に読みたい気持ちにならないのだが、こんなカッコいいソフトカバーはあまりお目にかかれず、つい手に取る。これは、ニューヨーク発の村上春樹短編集第2弾で…
『カササギ殺人事件』上・下 アンソニー・ホロヴィッツ 山田 蘭/訳 創元推理文庫 2019.5.19読了 年末の海外ミステリランキングを総ナメにした本作品、書店でもうず高く積み上げられていた。アガサ・クリスティへのオマージュと謳われておりなんとなく予想は…
『燃える家』 田中慎弥 ★ 講談社 2019.5.12 読了 表紙を見て、まるで新潮文庫の三島由紀夫作品のようだと思った。きっとそう感じたのは私だけではないだろう。これだけで、あの重厚で美しい文章を味わえるのかという期待感を持つ。田中慎弥さんの『共喰い』…
『羊たちの沈黙』 上下 トマス・ハリス 高見 浩/訳 新潮文庫 2019.5.5読了 映画のレクター4部作は、私の中ではサスペンス映画のベスト3に入り、どの作品も観た時大変興奮したことを覚えている。内容も知っているが何となく手にしたのが、映画上映では最初の…
ゴールデンウィーク、何処へ旅行に行くのにも普段の土日の数倍高いし、混んでるし…。ということで、以前から気になっていた、泊まれる本屋さん、「BOOK AND BED TOKYO 池袋店」に宿泊してみた。本は売っていないから本屋さんではなく、泊まれる図書館といっ…
『バベル九朔』 万城目学 角川文庫 2019.4.30読了 雑居ビルの管理人をしながら小説家を目指す"俺”の物語。謎のカラス女が発端となり、バベルの塔さながら、本来は5階までしかないはずのビルの上階部分へとどんどん導かれていく。表紙をめくると著者紹介のと…
『西行花伝』 辻邦生 新潮文庫 2019.4.27読了 歌人であり仏教僧である西行について、弟子の藤原秋実が綴る壮大な絵巻。森羅万象—この小説のテーマであり、作中では「いきとしいけるもの」とルビが振られている。 森羅万象の仏性に触れるとは、地上に現れたす…
『ゴッホの手紙』上(ベルナール宛)エミル・ベルナール編 中下(テオドル宛)J.vゴッホ-ボンゲル編 硲 伊之助/訳 岩波文庫 2019.4.20読了 なんて素敵な表紙なんだろう。こんな本はブックカバーを着けずに持ち歩きたくなる。ゴッホの絵は、日本人にとっても…
『血族』 山口瞳 P+D BOOKS 2019.4.13読了 次に読む本を選ぶ時に、何となく、男性作家のものが読みたいとか女性作家がいい、ミステリーにしよう、軽いタッチがいい、時代物にどっぷり漬かりたい、エッセイが読みたい、など誰しも考えると思う。これを手に…
/ 『彼女に関する十二章』 中島京子 中公文庫 2019.4.9読了 背表紙に、「ミドルエイジを元気にする上質の長編小説」とある。確かに(というかおそらく)50代くらいの女性にとって、ある!ある!という気持ちになるようなエピソードが続く。私にはしばらく先…
『プラスチックの祈り』 白石一文 朝日新聞出版 2019.4.6 読了 全盛期の白石さんの作品にはとうていお目に掛かれないだろう、とわかってはいるのに手にしてしまう。ストーリーも読み終えた時の感覚も予想ができるのに読んでしまうのは、自分自身が白石さんの…
『不倫』 パウロ・コエーリョ 木下眞穂/訳 角川文庫 2019.3.31読了 私がパウロ・コエーリョさんの『アルケミスト』を読んだのは、読書の楽しさを知り、小説を貪るように読み始めた頃だったと思う。当時は翻訳された作品を読み慣れておらず、読んだ後も日本…
『東京プリズン』 赤坂真理 河出文庫 2019.3.27読了 ほとんどが最終章のためのお膳立てのようだ。いくつかの時代と虚構が行ったり来たりして、迷子になりながら読み進めていく。文章はすっきりとしておりむしろ読みやすいのだが、何故かあまり入ってこなかっ…
『この世にたやすい仕事はない』 津村記久子 新潮文庫 2019.3.26読了 14年間勤め上げた仕事に燃え尽き投げ出してしまい、ゆるーい仕事を求めて転々と職を変えていく36歳女性の話。世の中には、本当に色々な仕事があり、そしてどんなことでも仕事になるんだな…
『蠕動で渉れ、汚泥の川を』 西村賢太 角川文庫 2019.3.24 読了 蠕動(ぜんどう)、あまり目にしない単語である。虫が付いているから虫の動きに関することだろうか。調べてみると、①ミミズなどの虫が身をくねらせてうごめきながら進むこと。②筋肉の収縮波が徐…
『レディ・ジョーカー』上・中・下 髙村薫 ★★ 新潮文庫 2019.3.22読了 言わずと知れた、グリコ・森永事件から着想を得たストーリー。同じモチーフの塩田武士さんの『罪の声』も良かったが、緻密な構成と深い人間考察、行間から漂うおどろおどろしさは髙村さ…
『本を読む本』 M.J.アドラー/C.W.ドーレン 外山滋比古/槇未知子 訳 講談社学術文庫 2019.3.11読了 本当は、ショーペンハウアーの『読書について』を読み、耳に痛い話を心身ともに受け入れようと覚悟していたのだが、立ち寄った書店に在庫がなく、それなら…
『国宝』 上 青春篇 下 花道編 吉田修一 朝日新聞出版 2019.3.10読了 私は歌舞伎を鑑賞したことがまだない。去年友人が「女子歌舞伎」なるものを習い始めて、その発表会を観に行ったことがあるだけだ。素人が演技していることもあるが、慣れない衣装、大きな…
『星を継ぐもの』 ジェイムズ・P・ホーガン 池 央耿 /訳 創元SF文庫 2019.3.5読了 普段だったらあまり手に取らない分野の小説だが、創元SF文庫で100冊突破!というロングセラーだったので気になり読んでみた。昔、立花隆さんの『宇宙からの帰還』を読…
『蓼喰う虫』 谷崎潤一郎 小出楢重/画 岩波文庫 2019.3.3読了 谷崎潤一郎といえば、『痴人の愛』『細雪』『卍』『春琴抄』が抜群に有名であるが、『蓼喰う虫』を読んでいる人はそう多くはないかもしれない。私もタイトルを知っていただけで初読みである。「…
『黙約』 上下 ドナ・タート 吉浦澄子/訳 ★★★ 新潮文庫 2019.3.2 読了 読んでいる間は勿論のこと、読み終えた後しばらくの間も興奮が冷めやらないほど、久しぶりに夢中になれる本に出会えた。1月に『村上さんのところ』を読んで村上春樹さんがドナ・タート…
『不死鳥少年 アンディ・タケシの東京大空襲』 石田衣良 毎日新聞出版 2019.2.24読了 14歳の日系アメリカ人時田武と、一緒に住む家族達、そして親友との東京大空襲を含む3日間の出来事がタケシの目線で語られている。広島や長崎の空襲に比べると、東京の空襲…
『浮世の画家』 カズオ・イシグロ 飛田茂雄/訳 ハヤカワepi文庫 2019.2.23読了 カズオ・イシグロさんの小説は4冊めである。文庫本の『浮世の画家』は表紙が変わったなと思ったら新版とのことで、冒頭に序文が掲載されていた。この小説を書いた当時の話や時…
『呪文』 星野智幸 河出文庫 2019.2.20読了 今日も初読みの方の本。星野智幸さんの作品は、『俺俺』という小説が単行本で並んでいる時から興味を持っていた。タイトルからして、当時よくニュースになっていたオレオレ詐偽の話だなと思っていたのもあるが、表…
『死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相』 ドニー・アイカー 安原和見/訳 ★ 河出書房新社 2019.2.18読了 よく訪れる書店で、大学生かもう少し上くらいの男性2人がこの本を前にして話していた。「これ、面白いらしいよ」その男性は買…
『共喰い』 田中慎弥 集英社文庫 2019.2.17読了 第146回芥川賞受賞作。当時の会見で話題をさらった田中慎弥さん。会見の印象が強すぎて目立ってしまい、確か同時受賞の円城塔さんに申し訳なかったと後で話していたような。なんとなく手にする機会を逃してい…
『ドン・キホーテ』前篇(一)(二)(三)後篇(一)(二)(三) セルバンテス 牛島信明/訳 岩波文庫 2019.2.16読了 セルバンテスといえばドン・キホーテだが、ドン・キホーテといえば、青いペンギンがキャラクターの、激安の殿堂を思い浮かべる人が多いかもしれない…
『雪の練習生』 多和田葉子 新潮文庫 2019.2.9読了 最後まで不思議な小説であった。まず、ホッキョクグマが主人公であることもそうだが、あたかも人間のように振舞っている。そして周りも何ともなしに対応する。クマの三世代が自伝で紡ぐ連作小説。大事なこ…
『考える葦』 平野啓一郎 キノブックス 2019.2.7読了 小説以外で平野さんの本を読むのは始めてである。平野さんの文章は読む度に圧巻で、これほどまでに文才があり、これほど豊富な語彙や表現力がある人が現代にいるのかと常々思っており、大好きな小説家の1…
『光のない海』 白石一文 集英社文庫 2019.2.6読了 白石さんは作中の舞台である地域を表現することがすこぶる上手だと思う。目に見える風景だけでなく、その地域ならではの料理であったり、そこに住む人達であったり。おそらく、小説を書く前に、自分でその…